私の上司になる人2

綱「部屋ここね。この階の部屋は全部使用人のだから」

『ウオオォォ!!広い!広いよ何だコレ!』

綱「そんな言うほど広い?たかが使用人用の部屋だよ」

『広いですよ!前に与えられた部屋なんかコレの三分の一程度…』

綱「…与えられた?」

『だああああ!!!アレです!!兄の独断により私の部屋はなんとクローゼットだったんですよね!!』

綱「悲惨だね」

『でしょう!』

綱「とりあえず今日はここでゆっくりしてて。なんかもうお兄さんのことは忘れな」

『リアルに何年振りだろう人の優しさに触れるの…!』

綱「更衣室で着替えた服はこの部屋に運ばせてあるから。基本的に起床は6時だけど大丈夫?」

『はい!前は4時とかに起きてたんでそれは平気です!』

綱「…4時?」

『…兄が、』

綱「それはもう分かったから。寅んちの家庭事情にはあまり深く突っ込みたくないよ。じゃあ、俺行くね。部屋の鍵そこにあるから」

『はーい』



ふぅ、なんとか一息つける……。まだ何もしてないのに一仕事終えた気分だ。嘘つくって大変。それにして非人道的な兄=白蘭様みたいなことになってきてるよ、偽エピソードっていうか白蘭様エピソードだよ。実際週3は4時起きさせられてたし、クローゼットではないにしてもこの部屋より狭い上なぜか白蘭様の出入り自由みたくなってたし。私が出掛けてる間に並べてた漫画の巻数ぐちゃぐちゃにされた時はいくら上司と言えど蹴りたくなった。

とりあえず白蘭様に渡す情報の整理をしよう。ボンゴレ幹部のことはもう完璧なんだからね!
まずサイヤ人みたいな頭したボスの綱吉様。なんか思い込み激しげ隼人様。頭に草みたいなのが生えてる骸様。ニコニコ動画に上げるならば間違いないなくタグに「ハンバーグの人」と付くであろう雲雀様。素で手にチッスするランボ様。自己紹介中も微妙に小走りしてた了平様。いちばん普通の人っぽい見た目した武様…よしバッチリ!完璧だよ、美人女スパイも目前だよ。私実はスパイになるべくして生まれてきたのかな。

ていうか帰るまで待てない。今言わないと忘れる。…ちょっと危険だけど大丈夫だよね。

白蘭様に電話しよう!



白[呼び出し中だよーまぁ寅チャンからの電話に出る人なんていないと思うけどね!呼び出し中だよー]

なんで呼び出し音が白蘭様のボイスになってやがんだァァァ!!!

白[まぁ寅チャンからの電話に出る人なんていないと思うけどね!]

『うるせェェ!!そんなに嫌われてねーよ!!っああああもう早く出て下さいよー!』

白[呼び出し中だよー]

『知っとるわァアア!!!』

白「うわッ寅チャン?何いきなり…うるさいなぁ……」

『何じゃないですよ!本気でウザそうにしないで下さい!なんですかあの呼び出し音は!?』

白「ちょっとしたオチャメ心だよ。寅チャン冗談通じないなぁ」

『白蘭様のやってるそれはオチャメじゃなくてイジメですから!ナイーブな人なら泣いてますよあの台詞!』

白「結果寅チャンの神経が図太いことが判明したからよかったんじゃない?ところでそんなくだらない話するために電話してきたの?」

『はっ違います!聞いて下さい白蘭様、大きな声では言えないんですけど実はボンゴレの極秘情報をゲットしましたァア!!』

白「声のトーンを下げなさい」

『一回しか言いませんからね!よぉぉく聞いといて下さいよ!!それでは発表じま゙ごふあッ!!!げほッ、えほ…ッ喉が…っ!!

白「汚なっ!思い出したように病弱にならないでよ、びっくりするから」

『思い出しちゃったんだから仕方ないでしょ!』

白「何その態度。決めた寅チャンくびにする」

『っだあああ!!冗談ですよ思い出したくらいで調子悪くなるんなら一生忘れてますよ!』

白「それよりボンゴレの極秘情報だよ、何なの?」

『そうだった!!わたくしつい先程!ボンゴレ10代目ボスの名前をゲットいたしました――!!!』

白「知ってるよそれくらい」

ええええええ!!?嘘だ!!私が必死こいて手に入れた情報を知ってるなんて!』

白「いつ必死こいてたの?君のミスで勝手にメイドさんになっただけじゃん。寅チャンがこくのは屁くらいで充分だよ」

『こう見えても必死なんですよ!それに私は屁なんかこきません!!ヒロインですから!!』

白「なんで食いつきの良さが必死さ<<<屁なのさ。あのね、あれだけ大きなマフィアのボスの名前知らない人なんかいないでしょ普通」

『あ……そういえば私もキャバッローネのボスの名前とか知ってました』

白「でしょ?寅チャンが今自信たっぷりに叫んだことは実は周知の事実だよ。正直さっきの寅チャンは鼻で笑えたよ」

『あちゃー!』

白「イヤあちゃーじゃなくてね。とにかくそんな情報じゃおうちに入れないから」

『で、でも私もっと良いこと知ってます!幹部の見た目とか好きな食べ物とか!』

白「それ知ってどうするの?」

『……プロフィール帳を作る?』

白「女子か」

『ま、まだあります!ボンゴレの幹部6人の名前だって知ってるんですから!暗記してんですよ!!ヤバくないですかコレ!!』

白「僕も知ってるよ」

『えええ!?白蘭様なんでそんなに何でも知ってるんですか!!』

白「数年前のリング争奪戦がどれほど有名だか寅チャンも知ってるでしょ?」

『そ、そんな……!もう他に何も知りませんよ、どうしたらいいんですか私!』

白「どうしようもないね。ぷっ」

『なんか最後笑われた……!』

白「まぁ最初から寅チャンにはあんまり期待してなかったから。何も情報を持ち帰れないようなら寅チャンは空のお星様になろうね。タイムリミットは今夜9時だから。ぷっ」

『笑うなァァ!!9時!?9時ってあと2分しかないじゃないですか!鬼ですかあんた!?』

白「やだなぁ、どっちかっていうと桃太郎だよ」

『どこが!?そんなあと2分で何か情報っていっても……!』


山「寅ー?」

『うわッこんな時に武様が!』

白「何?」

『ボンゴレ幹部の方の呼び出しですよ!急ぐんでちょっと切りますね!ではまた!』

白「あ、ちょ、僕いま、」


ピッ


『急げ急げーッ!』

バタン!




白「……ふーん、そっかー」

ボンゴレアジト、三階、使用人部屋の一室。外から通じる窓を開けて窓枠に腰掛けるけど、既に扉を閉めて部屋を出てしまった君は気づかなかっただろうね。僕がどこへ向かいながら電話してたかなんて。今、先程まで寅チャンが座ってたであろうベッドに手を伸ばせば届く距離にいることなんて。

白「王子様、なんて似合わなかったかな」

時刻、午後9時ちょうど。片手には一方的に切られた携帯電話。なんだか掛け直す気も待つ気も起こりそうにないや。

白「タイミング悪いなーあの子。せっかく助けにきてあげたのに」

会えない運命だったのかもね。







『お呼びですか武様!』

山「あぁ、ちょっと言い忘れたことがあってさ。別に俺じゃなくても良かったんだけど」

『なんでしょう?』

山「お前今日いきなり面接合格したから荷物とか全部ないだろ?だから明日は実家帰って荷物とってこいな」

えええええ!!?

山「何!?」

『いいんですか!?帰っていいんですか!!?』

山「お、おう荷物取りにな?」

『ここから出られる………!!』

山「お前ボンゴレのこと早速嫌いなの?」

『あ、いやそういう意味じゃなくてですね……。まぁいいや、明日帰っていいんですね!』

山「おまえ半日家出ただけでホームシックか?」

『まぁ似たようなもんですかね』


明日になったらミルフィオーレに帰れる!極秘情報?何それおいしいの?美人女スパイ?アホか私は何か別の方向でビッグになるんだ。
もうこんな危険なとこ戻ってくるもんか!



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