「しょおおいちぃぃうおりゃああああ」
「……何」
「テンション低っ!何その顔!いっつも難しい勉強ばっかしてるからそんなんなるんだよ!ちゃんと寝ろ馬鹿!」
「誰かさんがドア蹴破って入ってくるまでは寝てたんですがね。分かってる今夜中の2時なんだけど普通こんな時間に友人宅のドア蹴破る女子いないよ」
「昼がよかった?」
「違くて」
「いや私も寝ようとしてたんだけどさー、ちょっと素晴らしいこと思い付いちゃったんだよどうするコレ」
「知らないよ」
「聞きたい?」
「寝たい」
「ノリ悪っ。ちょっと正一くん何だいその辛気くさい顔は。いつもより二割増しで辛気くさいけど一体何がそこまで君を辛気くさくさせるのさ。てか臭っ!?この部屋普通に臭いわ!!何これ!?」
「あぁ夜ご飯ここで食べたから多分その匂い」
「ちょっ、いやいやいやこれ食物の匂いじゃないよ、仮にこの匂いの発生源を正一が毎日与えられてるんだとしたらそれは立派な虐待だ!!」
「急に僕の母親を犯罪者にしないで。つか結局何しに来たのさ」
「おっ聞く気になった?ふふ、実は正一にインタビューしに来ましたのさーっ!」
「は?」
「インタビューだよ!正一に質問攻めに来たんだよ!」
「マジでか。早く終わらしてね」
「無理。きっちり100問562答こたえてもらうから」
「問いに対する答えの数がとんでもない」
「まず1つ目!名前は?」
「入江正一。…つか知ってんでしょコレ」
「知らない人もいるかもしれない」
「どんだけ大規模な場で発表する気なの」
「次、身長は?」
「…155。おい。君が知ってる情報は僕を通さずとも勝手に書けばいいじゃん。君のことだからもっと奇抜な質問が来るかと思ったけど…」
「今履いてる下着は?」
「唐突に奇抜になったね」
「いや、正一がそこまで奇抜な質問を望むなら仕方ないか…って」
「何その仕方なく質問してあげました感。誰が得したのさ」
「でパンツ何色なのさ」
「いや、そんな…聞いてどうすんのさ。どう答えても微妙なリアクションしか返せないでしょ」
「サンバみたいなパンツ履いてんだったらソレ相応のリアクションはとるよ」
「どんなだよ」
「ツッこんでる暇があったら質問に答えてよ。全国の入江正一ファンクラブ協会のお姉さま方をどんだけ焦らしたら気が済むの」
「そんな怪しい団体が存在してたまるか」
「っあーもういいよ誰も正一のパンツなんか興味ねえよブァーカ。情熱の赤いブリーフって書いとくね。はい次」
「やめてよ青チェックのトランクスだから」
「最初からそうやって正直に答えりゃいいんだよ。はい次、明智光秀についてどうお考えですか?」
「どうも考えてないよ」
「マジで?今まで光秀について考えたことなかったの?」
「別に…テストの時『光秀?三秀?』ってちょっと迷ったことはあるけど」
「甘い…甘いわこれだからゆとりは…」
「同い年だよね」
「いい?光秀はね、裏切り者とか三日天下とかひどいこと言われてるけど実際は信長に謀反しても仕方ないほどの仕打ちを受けてんだよ!うおおお可哀想な光秀!やべっなんか悲しくなってきた!私これ語り出すと光秀の生誕から没後の様々な説まで語っちゃうけど大丈夫!?」
「やだよ。ていうか普段テストで2点とかとってる君が歴史のテストの戦国時代のときだけ100点とってたのってこれが原因?リアクションに困るほど極端だね」
「じゃあ正一は光秀のこと好きじゃないの?」
「君ほどの情熱的な愛情を持てる自信はない」
「本当にいいの?」
「どう頑張ってもコレ以上意見変わんないよ」
「そう…」
「なんで若干軽蔑するかな。君のそういう意味の分からない執着心が僕には理解できないよ」
「じゃあさ、次ね」
「ふあ…早くしてね本気で眠いから」
「光秀への愛情は私には及ばないながらも彼の生き方には感銘を受けたと答えたあなた」
「若干僕の答えをねじ曲げて解釈してるようだけど」
「では、私のことは?」
「……ん?」
「正一私のこと、好き?…それとも私が正一のこと想ってるほどには、及ばないのかな?」
なんだこの空気。え…、真面目に聞かれてる?インタビューを言い訳にして、本題はこれ?
真剣な目。開いた口。赤い頬。ハの字の眉。なんだこの可愛い生き物。
そんなの、答えは決まってる。
「………す「だめ!!」
「…は?」
「やっぱ無理!聞かない!忘れろ!」
「なんだそれ」
「忘れろうぉおおお」
「念じられても」
無理はこっちだよ。もう出かかった言葉。言わせてよ。
「好き」
「…………!」
「ちゃんと聞いてよ」
「…聞こえた」
おわり
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