短編 | ナノ






草むらを相棒のモココと歩いていた時だった。どこからか人の呻き声が耳に届き足を止めた。モココも気付いていたらしくキョロキョロと辺りを見回している。暫く声の出所を探してはみたものの姿は見えなかった。あたしとモココは首を傾げ、頷いた。
「気にせず行こう!」
再び歩き出したあたしの足にがしり、と何かが掴みかかった。思わず悲鳴を上げたあたしの横でモココがその何かに放電を食らわせた。



「死ぬかと思った」
ぐったりとする少年の名前はヒビキ君と言うらしい。先程の呻き声も足に掴みかかった何かもすべてヒビキ君のものだった。モココから放電を浴びせられたヒビキ君にお詫びにと麻痺治しをあげた。ヒビキ君の話によると野宿している時に寝惚けた彼の相棒、バクフーンにのしかかりを食らわされ死の淵に立たされたそうだ。80キロにのしかかられちゃ大変だ。骨が折れていないことに吃驚だ。暫くヒビキ君の苦労話を聞いていたあたしはそのまま眠ってしまった。
翌朝、顔を覗かせた太陽の眩しい光で目を覚ました。朝の空気を肺いっぱいに吸い込み吐き出した。そういえば野宿したんだっけ。欠伸を一つして近くの川で顔を洗ったらニョロモに顔面に水鉄砲をお見舞いされた。良い朝だ。後で覚えてろニョロモが。あのニョロモに電気ショックをお見舞いしてやろうと、未だ眠っているモココを起こしに戻ったあたしはすやすやと眠るモココの隣で、幸せそうに眠るバクフーンを見つけ微笑んだ。普段は厳ついバクフーンも眠った顔は可愛いんだなぁ、羨ましいなヒビキ君。そう思いながらバクフーンの腕の中できつく抱き締められ涎を垂らされている苦し気なヒビキ君の姿を見つめた。