短編 | ナノ






レッドがシロガネ山に籠り、グリーンがトキワジムのジムリーダーになった時あたしは彼等同様にチャンピオンリーグに挑戦して、四天王を倒した。けれど面倒だったからチャンピオンなんて肩書きを背負うことはやめてふらふらと今の今まで適当に過ごしていた。しかしニビのジムリーダーであり友人のタケシから唐突にポケモンドクターになるために勉強したいから代理にジムリーダーをしてほしいと連絡があった今日、あたしはカントーから逃げ出してジョウトへやって来た。責任や重荷を背負うなんて到底出来ない、と鼻を鳴らした。
相棒のサンダースはくんくんと初めて来た町の空気を嗅いで落ち着かない様子で辺りを見回していた。せっかくジョウトにやって来たんだ、また前のようにサンダース達と旅をするのも悪くはないか。と、キキョウシティまでの道程をのんびりと歩いていた。

「………ん?」

草むらが続く一本道を進んでいたあたしは前方に転がる物体を見つけて目を細めた。段々と近付いて行くにつれてその物体がポケモンだということがわかったと同時にそのポケモンの数メートル先に何故か少年が倒れているのを捉えた。普通ならば、大変だ!と血相変えてポケモンセンターへと運ぶのだろうが如何せんあたしは極度の面倒くさがりだったため、わざと避けて通ることにした。が、しかし正義感の強いサンダースがそれを許さずあたしの服の裾を引っ張って、少年の元へ連れて行こうとする。暫しの攻防の末とうとうあたしが折れて、少年を背負いサンダースが転がっていたポケモンをくわえて、ポケモンセンターへと運んだ。日が西に沈んだ午後4時頃、意識を失っていた少年は目を覚ました。ありがとうございます、と言って頭を下げた少年の名前はヒビキと言うらしい。頭を下げた時彼の胸元からトレーナーカードが落ちたから拾ってやったらヒビキは、すみません、と照れたように笑った。

「空腹で倒れる前に何か食べなよ。」
「はい。」
「じゃあね、気を付けて。」

踵を返し、さっさと面倒事から逃れようとしたあたしの腕をガシッ、とヒビキが掴んで引き留めた。

「……な、何?」

引きつった笑顔で振り返ればヒビキは意を決したように真っ直ぐに此方を見て言った。

「師匠になってください!!」
「……………はぁ?」

あまりにも突飛な発言にあたしはすっとんきょうな声を上げた。