短編 | ナノ






今私彼氏いない歴3ヶ月なんだ、とすれ違った女の子が女友達に肩を落としながら話しているのを耳にして小さく舌打ちした。あたしなんか自分の年齢と一緒だよ、と内心毒づきちょっと乱暴に飲み終えた空のペットボトルをゴミ箱に捨てた。彼氏が欲しいなんて思ったことがないと言えば嘘になるが、今ではもうある種の諦観を覚えるのである。あたしに彼氏が出来ない理由。それはあたしから行動を起こせないからではない。むしろあたしはそりゃもうなけなしの勇気を振り絞り告白をしたこともあった。けれど決まってこう言われるんだ。

「後が怖いから…ごめん」

後が怖い?それはどういう意味なんだ是非教えてくれ、とあたしが言おうとする前に告白相手は皆が皆逃げるようにその場を後にするんだ。そして一人立ち竦むあたしの背に「…残念だったね」と、レッドの声がかかる。



「ああ、本当に残念だよあたしは。可哀想な女だよ。」
「…何いきなり。」
「いいのもう。あたしには一生彼氏なんか出来ない。三十路過ぎても!還暦過ぎても!」

自室に帰って来たあたしはすやすや昼寝をしていたナエトルに抱きついた。首を絞められたアヒルのような声が聞こえたけど気にしない。

「彼氏ほしいの…?」

それまでエネコと猫じゃらしらしき物体で遊んでいたレッドが手を止めてあたしを見た。

「……………三十路までには、ほしいよ」

三十路過ぎても一人なんて辛い。コトネから白い目で見られる。シルバーから哀れみの目を向けられる。グリーンとヒビキには絶対に含み笑いをされるだろう。勿論げきりんの刑だけど。

「……、あ」

何か考えていたレッドは思いついたように声を上げた。

「何さ」
「メタモンの変身で」
「レッドのポケモンバカ野郎…!!」

あたしはレッドの百万円もするらしい自転車で走り出した。