クッキーハリケーン

「夜明先輩いますか!」




ザワザワとしていた教室がシン…と静まり返る。下級生が上級生の教室に来るって時点でもう心臓はバクバクなのに、会いたくてどう仕様もない先輩を呼び出すなんて心臓が破裂しちゃうんじゃないかって思った。



「△▽?こんなところにどうしたの?」
「あ!玲奈せんぱーいっ!」




緊張で私の心はポキッと折れちゃいそうなその時、大好きで大好きすぎる玲奈先輩が私を呼んでくれた。嬉しすぎて思わず抱きついてしまう。




「わっ何抱きついてんのよー!」
「ヘブッ!?愛が痛いです玲奈先輩っ」




頭を叩かれしぶしぶ離れる。バレー部のビンタはそんじょそこらと違うのだ。




「で、どうしたの?」
「っ、よあけせんぱいはおられるますかっ」
「夜明くん?」
「はいっ!!」




この前助けられたお礼がしたくて、何すればいいのかわからなかったからとりあえず得意のクッキーを作った。ベタ過ぎるかもしれないけど、こんなナリでも料理には少し自信がある。

玲奈先輩が「あそこにいるけど、」と指した先にはケータイを手に私を見ていた夜明先輩がいた。めめめがあってしまったぁぁあ!

だがしかし、休み時間とは有限なのだ。震える手を握りしめ、ダッシュで夜明先輩の元へ駆け寄る。私には女の子みたいにパタパタとかわいくかけよれるような技術はない




「よよよよよあけせんぱっ」
「どうしたの?#nameB#さんだったよね?」
「はいっ!バレーボール部の2年3組#nameB#△▽です!この前はありがとうでした!!」
「いいえ、どういたしまして」




ニコッと笑う夜明先輩。かっこいい…。うまく言葉が出てこなくて、もっと言いたいことがあるのに喉から先に音が出ない。




「〜〜〜っあの、これっ」




結局本題だった作ったクッキーを渡すしかできなかった。小さめの紙袋にできるだけ可愛くラッピングしたクッキーを詰めたもの。

私はテンパりすぎて言う気のなかった言葉が口から滑ってしまう。




「好きです!もらってください!!」





ん?




「…うわぁぁぁああ!!!」




何を言っているんだ!!?告白して℃*$〒☆&;!?!?




「ごごごめんなさぁぁぁい!!!」




ゴンっと机に額を当てて私は逃げた。今なら50m走でほのか先輩に勝てるかもしれない。






「…ごめん、うちの部員が」
「ププッ、告白されてる…!」
「台風みたいな子ですねぇ」
「……(かわいいなぁ)」





机に置き去りにされたクッキー。形はもちろんハートマーク。