▽大嫌いだよ


「……ブン太」


「嫌だ」


「…ブン太」


「嫌だ」


「ブン「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!」」



私の目の前で泣き叫ぶ彼。
名前を呼ぶだけで狂ったように“嫌だ”を連呼する。
でも、今更遅い。
今頃嫌だと言われても私の方こそ嫌だ。
都合が良すぎる。



「私だって、嫌だよ」


「じゃあ、」


「でも、こうなったのはブン太の女遊びが激しいせいなんじゃない?」


「ちがっ」


「違わないよ。私、ちゃんとこの目で浮気してるところ見たから」



何の表情も出さず、ただブン太を冷たい目で見る。
何で、何で今更慌てはじめるの。
もっと、もっともっともっともっともっともっと早くからこうなることを予想して行動してよ。
泣いて私に縋るけど、あなたが一番苦しいんじゃないんだよ。
寧ろ何であなたが泣いてるか分からない。
泣きたいのは、あたしだ。



「ごめんっ…俺、ちゃんと今度から直すから…!」



今度って何時?
前にもその台詞言ったよ、聞いたよ。
何回も、何回も何回も聞いたよ。



「俺が一番愛してんのはお前だけだ…!だから、別れないでくれ…!別れたく、ない」



それも前聞いた。
どうせブン太はこう言えば女はまた戻ってくるって思ってるんだろうな。
実際前回もその前も確かに私はブン太の許に戻った。
私も彼を愛していたし、ずっと一緒に居たかったから。
でも、もう辛い。
何度ブン太を許したってブン太はまた違う女と遊んでいる。
手を絡めて、抱き合って、キスして。
私の心が辛い、苦しいと叫んでるにも構わずにブン太は何回も何回も私を裏切る。
もう懲り懲りだ。



「……ブン太」


「名前…!」


「今まで付き合ってくれてありがとう。…大嫌いだったよ、“丸井さん”。勿論これからも」



そう言って私はこの場を去った。
痛む筈の心が今は軽い。
やっぱり私は丸井さん大嫌いなんだな。
立ち去る私の後ろ姿を見て丸井さんが絶望した顔で此方を見ていたなんて、私は知らない。



(あなた何かを好きになった私が馬鹿だった)



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