▽お祭り


今日はみんながお待ちかねのお祭り。
屋台が沢山並んでて、良い匂いが漂い、人が沢山通っている。
私達は4人で、その人集りの中を通って屋台を見ている。



「名前!たこ焼き食おうぜ」


「たこ焼き何か後にして先に綿飴食いてー」


「いや、ここはやっぱりゲームd「「黙れヅラ」」」


「ヅラじゃない、桂だァァァ!!」



いつも通りに言い合いをする3人。
私もそれを見ていつも通り小さく笑う。



「ほら、屋台回ろうよ」




そう言い、私は3人の手を取り歩き出す。
暗くなるにつれて、だんだんと人も増えてきた。
私はみんなと離れないように、手をギュッと力を込めて握った。



「ほら、たこ焼き食べようか」



屋台のおじさんに代金を払ってたこ焼きを3人前受け取る。
そしてそのたこ焼きを3人に渡した。



「名前は食べねーのか?」



突如、銀時君が私に話しかけてきた。
よく見ればみんな少し迷惑そうにたこ焼きを受け取っている。私はふふ、と微笑んでまたみんなの手を取り歩きだした。



「私はね、こうしてみんなと一緒に歩いて回れるだけで幸せだからいいんだ。だからそれはみんなで食べて?」


「ヤだ」


「え」



珍しく晋助君が否定した。ムスっとした顔で私の顔を覗き込む。
3人も同様にちょっと怒り顔。



「俺らは名前と一緒に食べたり遊んだりしたいんだよ」


「名前殿だけ何もしないなんて俺らが悪いみたいではないか」


「だから一緒に食おうぜ」



私がさっき挙げたたこ焼きを1人1個づつ持ち、それを私に差し出した。
私は戸惑いながらまた3人の顔を見た。
そしたらコクっと頷いて私にたこ焼きをグイッと差し出す。



「ありがとう」



差し出されたたこ焼きを1つずつ食べていく。
出来立てのたこ焼きだから熱くて上手く食べれなかったが、頑張って熱さをこらえながらたこ焼きを食べきった。
それに満足したのか、ニコッと笑って私の腕を取り走り出した。


私達は色々な屋台を見回った。
焼きそばを食べたり射的をしたり林檎飴を食べたり、輪投げをしたりした。
4人で笑って回るのがとても楽しかった。
楽しかった……けど。



「みんな…どこ?」



迷子になってしまったのだ。
途中、トイレに行ってくるからここで待っていてと言い、トイレへと向かった。
が、今トイレから帰ってきたらみんながいなくなっていた。
辺りを360度見回しても3人の姿は全くと言っていいほど見当たらない。

どうしよう。
もしかしたら誰かに連れ去られたのかもしれない。
あの子達は賢い子達だけど、矢張り子供だから連れ去られたという可能性もある。
私はマイナス思考なことばかり考え、3人を探し回る。
名前を1人1人呼んでもみんないない。
周りにいる人達が叫んでいる私を横目で見ながら私の横を通ってっている。
何でみんな助けてくれないんだ。
ふと、そんなことまで考えてしまう。
見つからない焦りと、周りの人達が知らないフリをしているのが余計に腹を立てて辺りに怒りを撒き散らしそうだ。
でもそんな衝動をぐっとこらえて、私はまた走りながら3人を探し回る。


いない

いない

いない


どこを探しても見つからない。私が目を離したからだ。
私が、あの時トイレ何かに行ったから3人と離れてしまったのだ。

これでだいたい全体を探したと思う。
でもここから消え去ったようにみんなが見つからない。

どうして見つからないの?

不安が私を襲い、私はただその場に立ち尽くして呆然としているだけだった。

祭り何てこない方が良かったのかな?
私はみんなと楽しく祭りを回りたかっただけじゃないの?
何でこんなことになるの?

不安からだんだんと後悔へと変わっていき、私は屋台が少ない場所へと移動した。
夏なのに、人混みから避けただけで涼しい風が頬をかする。
普通はここでリラックスをするようなものなんだろう。
でも私はただリラックスなんかせず、たださっき立ってたようにボケーっとするだけだった。

……いや、でもまだ探したら見つかるかもしれない。

諦めていた私が、少しそんなことを思ってきた。
祭りなんだから、そんな遠くには行ってないはずだ。
もしかしたら村塾に帰っているかもしれない。
ぐっと拳を握り、最後の光の希望の村塾を信じて私は村塾へと走っていった。


「先生!!」



勢いよく扉を開き、松陽先生に話しかける。
松陽先生の回りを見渡すと矢張り誰もいなく、松陽先生1人だけだった。
少しやっぱりいなかったのか、と残念がってたが多分違う部屋にいるだろうと思い私はすぐに違う部屋へと探しに行こうとした。
だけど松陽先生がそんな私の肩に手を置いた。
後ろを振り返って松陽先生の顔を見ると何だか松陽先生は笑っているように見える。
何故だか疑問にもった私はそのまま首を傾げる。



「あの子達を探しているんですよね?」


「はい…。わ、私、みんなとはぐれて…」



言葉にしてみると何だか泣きそうになる。
私こんなに弱かったっけ、と改めて思った。
多分私がこんなに心配しているのはあの3人が好きだからだ。
じゃなきゃ泣きそうになどならない。



「名前さん、安心してください。3人はここの塾内にいますよ」


「えっ」



松陽先生の言葉に驚きを持つ。
でもそれと同時にやっぱり、とも思った。
松陽先生が「あの子達は…」と言いかけている途中、私はこの部屋へと出てすぐに3人がいるだろう場所へと移動した。

向かった場所は私の部屋。
よく私の部屋で遊んでいたから、きっとここだろうと思った。
部屋の前につき、扉を開ける。
すると3人の姿があった。
私は嬉しくて、3人を抱き締める。



「みんな…良かった…」


「名前!」


「どこ行ってたんだよ」


「名前殿がいなくなったから俺らは村塾に一旦帰ったんだぞ」


「……え」



私がいなくなった?
いやいや、私ちゃんとトイレ行くっていったはずだけど…。



「私がどこかに行く前、私の声聞こえた?」


「「「全く」」」


「…………」



なら私の不注意だったのか。
私は3人にごめんね、と言いまた強く抱き締めた。
するとどこからか、ドンっという音が聞こえてきた。
何の音かと気になり周りを見渡す。
すると、外の方から花火が見えた。
赤や青、黄色など色々な色が何回も打ち上げられていて、とても綺麗だった。



「きれい…だね」



そう一言呟き、私達は静かに空を見上げて花火を見ていた。




(名前、また行こうな)

(絶対だぞ!!)

(破ったら針千本飲ますからな!!)

(うん、約束ね)




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