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───今年は更に依頼人が増えますように、それから可愛い彼女ってかシズクといちゃいちゃ出来ますように、あとフェイの無愛想が治ります様に。
2礼2拍手1礼、丁寧に実行して3つもお願い事をしておいた。
華やかなクリスマスが終わり、気がつけばあっという間に新年になっていた。
テオが初詣に来れたのは年があけて既に1ヶ月が過ぎてからようやくだった。
というより初詣なんてここ数年していなかったのだが、幻影旅団との関係を認め、関わり引越しした事もあり、去年はテオにとって大きな転機となっていた。
それ故に危険もありうると考え、たまには神でも頼ってみるか、という気になったのがつい昨日の事だ。
一月も過ぎてしまった郊外の神社にひと気はなく、年末年始は雇われているアルバイトの巫女の姿ももうない。
おまもりなどを売るための4つの窓口も今は1箇所しか開いておらず、そこから見える中の様子と言えば、坊主頭の男が眠そうに頬杖をついている姿だけである。
これだけ暇ならば3つ4つ願い事をしても構わないだろう。
───もし本当に神様なんているのなら、だけどね。
実は神なんて全く信じていない。けれど同時に、もしも神がいるのならば、神は悪人にも善人にも信心深い者にもそうでない者にも平等であるはずだ。
平等さを欠いたらそれはもう神などではなく、人間だろう。
そして人間に他人の願いをかなえてやる力も余裕もない。
それがテオの考え方だった。
ナムナムと呟きながら冷えた手をこすり合わせていると後ろからふいに声が掛かった。
「あれ?テオ?」
「えっ!?」
振り返るとそこには今まさに願っていた可愛い女、シズクが立っていた。
「シズク!?なんでこんなところに?」
───早速ご利益が!?
「ああ、うん、これ、返しに来ただけだよ。」
シズクが手に持っていた紙袋の中身を見せる。そこには赤と白の衣服。
「これって、もしかして巫女装束?」
「うん。年末年始ここにいたから。
「ええっ!?まさかバイトしてたの?ってか必要あんの?」
「う〜ん……バイトの必要はないんだけど……」
口ごもる様子にすぐにクモの仕事がらみだとわかった。
テオはシズクの耳元に近寄り
「ここって、そんなお宝あるの?」
と小声で聞いた。
するとシズクは頷いて
「アジト帰ったら教えてあげます。」
と囁き返した。
それから窓口で眠そうにしていた坊主頭に紙袋を渡すと何言か会話を交わしてからテオの元へと戻ってきた。
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