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亡国のユダ【海図41】

俺の見解はこうだ。

王の残した日記には子供がいることは書いてあったが、戦争中子供達がどうしていたかは書いていなかった。
だが、俺が持っていたペンダントで玉座を動かす事を出来たことを考えると、戦争中、もしくはそれよりも前に島の外へ逃がしていたのではないかと考える。
あるいはそいつらこそクカンユ王国にマソの信仰について話したのかもしれない。

だが、少なくとも今俺がこうしてここに立っているのはそいつらが生きていたからに相違ない。
俺が小さい頃から持っているペンダントは俺の家系に代々伝わっているものだと聞いた。

2つしかないものだそうだ。この島での調査が終わり次第最悪の事態を考え、俺はパドキア共和国に残してきた娘にペンダントを送ろうと思う。
まさか出生がよく分からなかったが、俺が王族の血筋だったとは思っていなかったが、このペンダントを引き継いでさえいれば、いつか俺の子孫達がこの島にたどり着き、そして理不尽な戦争で滅ぼされたマソを再び蘇らせてくれることだろう。

そして裏切り者のユダとされ、魔女の洞窟と呼ばれる場所に所に幽閉されていた王妃だが、彼女は王城に繋がっているはずの道があるにも関わらず島から逃げ出さなかったのは王との約束を果たすためとしか考えられない。そして彼女もまた、俺と同じように子孫、いや、彼女の場合は自分達の子供がすぐに国を再建してくれると考えたのだろう。だから自分は逃げ出すことはせず、金に換えられる銀貨の具現化能力だけを残すため島に残った、と考えている。そしてそうするうちに彼女も例の疫病に掛かってしまったのだろう。自ら棺に入りそして死に絶えた。王と同じように強い信念で死後も続く念能力を残したのだ。

俺はその手助けの為に疫病の原因になった植物を必ずや根絶やしにしてみせる。

最後に1つだけ俺の望みを誰かが叶えてくれるのならば、パドキアにおいてきた娘にもし、子供が出来た時は【心華】そう名付けてほしい。
娘の名前すら知らない俺が言うのもおこがましいが、子供のことを妻にまかせきりにしてしまったせめてもの罪滅ぼしだ。孫の名づけくらいさせてくれ。このことだけはカモメ便で必ず妻の下へ届けると誓う。

手帳の中身はそれで終わっていた。

「おい、シン。心華ってのはなんだ?この願いが届いたんだとしたら孫ってお前以外にもいるのか?」
フィンクスが手帳の最後に記された見慣れない文字に疑問符を浮かべた。

「……これが、アタシの名前か。」

「は?どういうことよ?」

「いや、昔母さんから聞いたことがあるんだよ。アタシには東方の血があるって。で、アタシの名前はその国の文字で書くと凱 心華、と書くんだ。」
シンファはそういいながら、自分の指先に込めたオーラで文字を綴った。

「ほお、お前それが本名なのか。」

「本名っていうかこれが正しい書き方だけど、今じゃ珍しい民族だからな。一般的にもわかるようにシンファ=カイと名乗ってるんだよ。本来東方の国だとファミリーネーム、ファーストネームの順で名乗るんだ。」

「ああ、ノブナガと同じね。」
フェイタンが思い出したように言った。

「ノブナガはたしかジャポンだったな。お前の名前の響きとは随分違うような気がするけど。」

「ジャポンよりは少し西の国だって聞いたことがある。ノブナガは名前の響きからするとシノビとかがいるような国じゃねえのか?」
シンファが記憶を頼りに聞くとマチが頷いていた。

「ああ、そうだね、ソクシンブツってヤツもその国の奴等なら知ってるのかもね。」

「ん?けどって事はマソもその文字って事だろ?ならその国の辺りにはマソの国の生き残りがいるって事か?」
フィンクスが言ったが、それにはフェイタンが首を振った。

「いや、多分それはないと思うね。」


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