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亡国のユダ【海図40】

一度自分なりに決めた戒めも納得した上で解いてしまった後は却って清々しいものだった。
いや、清々しいどころかアイツとは違うんだ、と思えて寧ろ心地いいくらいだった。気が晴れたというよりも気が良くなれた。

深夜まで愛し合っていても、長年染み付いた生活リズムは崩れることなく、朝日が昇ると殆ど同時にシンファの目は開く。

───ここは……ああ、そうかアタシは昨日……

なんだかスッキリしたな、と考えながら隣を見れば愛しい友。
シンファにとってフェイタンは仲間で盟友でそして大切な唯一無二の男だ。
今はこうして両目で見ることができるその姿も亡国マソのことが片付けばオモカゲに片目を提供してしまい見られなくなる。

今の内にしっかりと心にその姿を刻みつけよう。
そう考えながらフェイタンの姿をしばらく眺めてから外の様子を見ようとベッドから降りようとした。
ところがその腕をグイ、と掴まれる。
「フェイ?起きてる?」
聞いてはみたが返事はない。
無意識がそうさせたのかと思うと妙に暖かい気持ちがシンファを支配していった。

───もう少し、そばに居よう。
そう決めてフェイタンに身を寄せるとしっかりと抱きしめられた。

細いながらもシンファの比ではない位に引き締まった身体はとても頼もしく、この先何があっても彼と共にあれば間違う事などないとさえ思えた。

フェイタンに抱き締められながらカーテンの隙間から漏れる朝日に目を細めた。
昨夜のことを思い出す。

なんだか初めてとは思えないほど気持ちよくて、最後はほとんど気絶していたような気がする。
ふとあたりを見れば、ベッドも移動している。おそらく愛し合ったベッドが汚れていたからフェイタンが移動させてくれたのだろう。

おかげで寒さに起きることもなかった。
けれどそっと、自分の太ももに手を触れてみると、自分の体液なのか、フェイタンのものかわからないが滴った水分は乾いて肌に張り付いてしまっていた。

───これはシャワーを浴びたいところだな。汗もかいたし。

再び身を起こそうと身体を動かすと

「シン、起きたのか?」
と声がかかった。
どうやらフェイタンも目が覚めたようだ。

「あ、ごめん、起こしたか?」

「ああ、ま、腹が減たから起きたね、」

「そっか。えっと、その、昨日はなんかありがとう。」

思わず礼を言うとフェイタンが笑った。

「はは、何ねそれ。」
「いやぁなんかすごい、気持ちよかったから」
「らしいね。」
「そ、それでちょっとシャワー浴びてくる!」
改めて言ったら恥ずかしかったのか、シンファはパッとベッドから降りるとシャワールームに入っていった。

しばらくしてシンファと入れ替わりでフェイタンもシャワーを浴びると朝食をとりに部屋を出た。

朝食を振舞っている部屋ではマチとフィンクスがうたた寝していた。

「マチ、フィンクス、風邪ひくぞ。」
シンファが2人を起こす。

「ん?ああ、シン。悪ぃ。」

「2人とも部屋に戻らなかったのか?」

シンファが聞くと、マチが話してくれた。
それによると、2人は昨日シンファたちを残して宿を出た後、2人で村を散策してみたのだと言う。その道中でもしオモカゲにでも会えれば色々ととっちめて話を聞こうと考えていたそうだが、結局オモカゲどころかレツにすら会わなかったそうだ。


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