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亡国のユダ【海図39】

墓はあった。

以前来たときと何も変わらずそこに寂しくポツンと。

けれど明らかに掘り返された跡があった。

「こりゃあ……持っていかれてるかもな。」
フィンクスがその場にかがんで掘り返された土を掬ってみる。

「一応掘り返してみるね。」
フェイタンもその隣に屈みこんで2人で墓を掘り起こし始めた。
「思ったより深いぞこれ。」
「2人とも、これ使ってくれ。」
シンファは2人に山中で拾っておいた枝を渡す。それを2人は周で強化すると掘り進めて行く。
50センチ近く掘り進めているとカツ、と枝が何かに当たる。

「おい、骨出てきたぞ。」
───骨、シンロンの、骨か。
「頭蓋骨だけ見当たらないね。」
周囲を更に掘ってみたが、頭蓋骨だけが見当たらなかった。そして同じように
「やっぱ手帳もねぇな。」
周囲1メートルほど掘り起こしたものの手帳が見つからなかった。
やはりオモカゲに持っていかれてしまったのだろう。

「……よし、戻ろう。ここにないとわかれば聞く相手も決まってる。長居してる間にヒソカが来ないとも限らない。」
サッと頭を切り替え、シンファが踵を返す。
本当は墓前に花の1つも供えたかったが、まだ時期ではないようだ。
山を降りる途中シンファは誰ともなく聞いた。
「好きとか嫌いっていう感情論を抜きにしたらヒソカの戦闘力ってどう評価してる?」

一瞬沈黙があったがすぐにマチが返した。
「まあ、相当なもんだね。感覚、力、スピード、勘、経験どれをとってもね。」
「そうだな。否定は出来ねぇな。けどあいつ負け戦はしねぇからな。正直未知、って言う方が正しいかもな。」
フィンクスがそう続けた。

「負け戦はしない?つまりヒソカが戦いを挑む相手はサシなら勝てそうな相手って事か?」

「そういうこった。」
「は、命が惜しいだけね。」

フンと、ヒソカを鼻で笑う様子から、フェイタンは相当ヒソカが嫌いらしい。
「そうか、わかった。とにかく、勘は鋭い、って事だな?」
「そうだね。」
「それならオモカゲにはアタシ1人で会いにいく。」
シンファが宣言するとぎょっとした顔でフェイタンがシンファを見る。
「ダメね、危険すぎるよ。」

「危険なのはわかってる。それに皆のことを信用してねぇから、なんてこともない。単純に、皆がオモカゲの前に姿を現したら警戒される可能性があるじゃねぇか。そしたら聞きたいことも聞けない。」

シンファの言いたいことはわかるし、確かにそうしたほうがオモカゲとの接触は確実なものになるだろう。だが、先ほどシンファが推測したように、ヒソカがオモカゲに用意している報酬がシンファの首や眼球なのだとしたらあまりにも危険すぎる。
そう思えばこそ、団員達は素直に首を縦には振れない。

「ヒソカの感覚は鋭いんだろ?だったらオモカゲよりアタシの方が強いはずだ。まあ報酬の件が当たってれば、の話だけど。」

「いや、あんたの言いたいことはわかるけどさ……」
「もちろん近くにはいてもらうよ。けど会うのはアタシだけにしたほうが良い。」
再度シンファが言うと
「あ〜〜〜〜!わぁったよ、おめぇ頑固だしな。その代わり何かあればすぐ呼べよ。フェイ、それでいいだろ?」
フィンクスが諦めたように頭をぼりぼりとかきながら半ば怒鳴るように承諾した。
フェイタンは納得したとは言いがたい表情だったが、フィンクスの言うようにシンファは頑固なところが多々ある。それでいて今シンファが言ったことは一理あることは間違いなかった。

「わかたよ。ワタシ達は近くで待てる。ヒソカが来る可能性もあるし、それを見張てるね。」
と頷いたのだった。




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