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亡国のユダ【海図38】

「それと、シンロンの念能力について話しておいてやる。」

今後の海との関わり方に使えるだろう、と言って当時を懐かしむように話し始めた。
シンロン=カイは有能な特質系能力者だったそうだ。
特質系でありながら能力としては操作系に近いものだったらしく、彼が主に操作していたのは海の生物だった。

そして特質系としての能力も利用し、自身の血族は自分と同じように海の生き物を使役出来るようにしていた。

とはいえ、これは能力ではあったが、シンロン自身が海の生き物に愛されていたから成立した能力に他ならない。
シンロンが長い海上での生活で関わって来た海の生き物を中心に、自分が生きている間は自分とシードラゴンの仲間達、自分の死後は自分の血族の力になるよう念能力を残しておいたのだという。

「ついでに言うなら奴は生まれ持っての特質系でありながら、戦闘に特化した能力はほとんど無かった、守ることに力を入れていたからな。その分戦闘については俺の分野だった。」

これで合点がいった。シンファが何度もイルカに助けられていたのはその能力によるものだったのだろう。
イルカの知能は非常に高いという。
一頭を手懐けてしまえば群れで行動するイルカ達は皆シンロンの血が流れる者の助けとなるのだろう。

イルカだけでなく海鳥などの海上を飛ぶ生き物も同じように使役していたらしく、シンファと同じようにカモメ便も使っていたらしい。

「それじゃあのカモメがアタシの力になってくれてんのは全てじいさんのおかげってことか。」

「それだけじゃねぇと思うがな。あいつが海の生き物に愛されていたようにお前も愛されてるのさ。」

「……アタシには有難い言葉だ。それならアンタ幻獣については知ってますか?」

シンファが言うと船長は眉をピクリとあげた。

「それは、俺たちには解けなかった。特にシリェーナトライアングルのあの鳥にはかなり手こずった。シンロンがせめて自分の子孫がここを通ることがある時に苦痛が和らぐようにってあの声を緩和できる音の鐘をトライアンフ号につけさせた位だ。」

シンロン達がマソの調査をしている間疫病に苦しんでいる船員達はシンロンの言葉にしたがって重い体を引きずって、それでも鐘を取り付けたのだ。

全てはシンロンという男の人望によるものだ、と船長は笑った。

「見たところお前、シンファって言ったか?お前も人望はありそうだ、仲間はせいぜい大事にしな。……後悔のねえ生き方をするといい。」


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