へたれは嫌い、優しさは……


「あーもう、どうしてそうブンちゃんを甘やかすかなあジャッカルは!
おやつならまだしも、それ自分の昼ごはんなんでしょ?! 困るのは自分じゃない!」
「いやよう、別に慣れてるしなぁ」
「ブンちゃんも! 家ではお兄さんなんでしょ? ジャッカルに甘えない!」
「別に甘えてるわけじゃないぜ。ジャッカルがやってくれてるだけだし」
「ジャッカル!!!」
「……すまん」


結局怒られるのは自分。ジャッカルはこうした不条理にあまりに慣れすぎていた。
怒っている人物は同じクラスの紫帆。クラスで一番男勝りな女だ。ある意味真田に似ているが、容姿は案外美人で特に女子からの人望があつい。
ことのはじまりはジャッカルが部活用のスポーツドリンクを丸井に取られていたのを紫帆が目撃したことだった。丸井なんて奴、と怒った紫帆に良いんだと言うと、ジャッカルが怒られはじめて。でも最後に、「これ、ないよりはマシでしょ」と紫帆の飲みかけたお茶をくれたのだ。
いつも丸井と一緒にいると彼女は少々五月蝿いが、自分のことのように怒ってくれる紫帆に、悪い気はしない。















「よう、紫帆じゃねえか」
「あ、ジャッカル。今日は一人なの?」
「おう。たまの休日くらい部活から離れてもいいだろ」

今は商店街へ親に頼まれた買い物をしているところだった。紫帆の荷物を見る限り、相手も似たような用だろう。

「今から帰るのか」
「うん。そろそろ帰らないと夕食遅れちゃう」
「自分で作るのか?」
「そうよ。お母さん今日仕事遅いの。悪い?」
「いや、悪いとかじゃなくてよ……」


紫帆には確か弟がいる。恐らく、共働きの親の代わりに弟の世話が多いのだろう。周りはいつもジャッカルのことを苦労人と呼ぶが、知らないだけで実際は紫帆もかなり大変なのである。






「家、近いじゃねえか。途中まで持ってやるよ」
「え、でも」
「いいからいいから」

あくまで優しく、でも半ば無理矢理荷物を奪う。
ジャッカルはいつも皆の言いなりになっているように見えるときがある。けれど実際は優しい男なのだ。


「……ありがとう」
「おい、顔赤いぞ。風邪か?」
「ばか!!!」



END

まさかの久しぶり更新がジャッカル。
20120730


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