その後イップスで固まりました


仁王がおかしい。
朝からにやにやへにょへにょしてて、一言で言うと気持ちが悪い。彼の目線は常に腕のカラフルな腕時計にいき、何かを待っているのかと思ったがそうではないらしい。



「なあ、何アレ」
見かねた丸井が仁王を指さすと、まるでお見通しな柳が答える。
「あれは麻倉から貰った腕時計だ」
「ふーん。麻倉っていうとお前と同じクラスだろ? 仁王と付き合ってたのか」
知らなかったぜ、まあ別に興味ねえけど。言葉とは裏腹に風船ガムは動揺で割れた。

「お前が知らないのも無理はない。昨日告白したばかりだったからな」
「昨日OK貰ってそのままプレゼント貰うってのも変な流れだけど、それより俺はお前の情報網が恐いぜ……」
「しかしあのままでは精市や弦一郎に見つかると非難は必至だな。テニスに身が入っていない。というわけで、すまないが仁王を止めてきてくれないか」
必要なことはあくまでスルーの柳だが、その波に呑まれるわけにはいかない。

「なんで俺?! 嫌だあんな状態の仁王に関わりたくないって!」
「俺よりお前の方がクラスメイトだし仲良いだろう。よろしく頼む」
丸井の反論より先に柳はすたすた歩いていってしまった。畜生、と心の中で毒づく。
周りに他のレギュラーはおらず、なんだかんだいってお人よしのブン太は鉛のような足を動かす。



「あー、仁王?」
まるで返事がない。ただの屍のようだ。
「仁王、おい返事しろよ」
「…………」
「仁王!!!」
「うわっ、ブンちゃんか。そんな大声出したらびっくりするじゃろ」
「呼んでも気づかないお前が悪い! ていうかテニスの練習しろよ! 下級生に示しがつかないだろぃ」

「俺は真面目じゃ。次の試合で勝つって紫帆ちゃんと約束したんじゃ」
「じゃあやろうぜ。集中出来ないんなら練習中その時計外しとけよ」
「嫌じゃ! 俺と紫帆ちゃんの絆を切る奴は誰だろうと許さんぜよ!」


……駄目だ、こいつ。めんどくさい。
丸井はこれだけはしたくなかったが、最終兵器神の子を呼びに行った。


END
20120502


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