恋人禁止令


「仁王め……最近あやつはどうしてしまったのだ」

ベンチに座って部員を見渡していた真田が溜息を吐く。側にいた柳と幸村は理由を知った上でやや呆れていた。
「まあ、女遊びするよりは麻倉さんに手綱を握ってもらう方がましだけど」
「麻倉?」
「仁王の彼女だ。お前も一緒に見たことはあるだろう」
「恋だと? 何を考えておるのだ……たるんどる」
「まあ、恋愛を規制するつもりはないが」

部活をサボってデートに行こうものなら三強も堂々と指導できるが、紫帆の命令なのかむしろ部活をサボることはなくなった。しかし、妙に腑抜けてしまって試合にキレが見られない。休憩の合間には誰もが耳タコな紫帆トークを延々と話す。特に餌食となる柳生が可哀相だ。





「はあ、仕方ない…………仁王、紫帆禁止令を出すよ」
仁王を呼び出し、部長直々にそう告げると、意味がわからないとポカンとする。
「紫帆禁止令?」
「放課後から部活が終わるまで麻倉さんと話すの禁止するから」

一気に血の気が引く仁王。
「そんな! 紫帆がおらんと死んじまうぜよ」
「俺も部員の私生活にケチつけたくはないけど、部活に支障がありすぎるよ」

幸村の顔を見て冗談かどうかわからない仁王ではない。だが本気だからと言ってたとえ神の子だろうが魔王だろうか、紫帆を諦めるという選択肢はなかった。



「うう……喰らえナリ!」
まるで『別れろ』と言われたかの如く泣きじゃくってキレた仁王は、様子を見に来た柳生の腕をがぶりと噛みついて離れない。ここで幸村に攻撃しなかったのは無意識な抵抗からか、とりあえず柳生に良い迷惑だ。




「大変だ、仁王がご乱心召された!」
「紫帆、紫帆を差し出せ!」

「……なんかノリノリっすね柳先輩達」
訳のわからない事態にレギュラーは驚きと好奇心をむき出しにしてはやし立てる。とりあえず同じクラスのブン太が 紫帆をつれてきた。



「え、何、どうしたの?」
何もわからず男子部室につれてこられキョトンとする紫帆を茫然と見ると、わーんと泣きく。

紫帆からの自立は到底できない仁王君なのだ。



END
20120308


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