白黒の雪
「ごめんなさい!」
「駄目、許さないよ」
今日はブラッククリスマス。
ああもうなんで今日に限ってこんなに幸村君の機嫌悪いの。
喧嘩の理由は、クリスマスの予定を口にしたことから始まった。
幸村君は三年間必死で立海テニス部を作り上げてきた。引退しても、思い入れは強いはずだ。私は短い期間だったとはいえマネージャーとして、クリスマスは皆でパーティーをしたらどうかと提案したのだ。その瞬間みるみると顔の曇る幸村君に、しまったと焦ってももう遅い。いつも喧嘩は私が折れるしかない。でも今回はまだ口論もしていないのに、自分が当然みたいな態度が許せない。
「…………じゃー幸村君なんてキライだもん」
何でいつも謝るのは私の方なんだろう。
見せたことのない反骨精神を抱いた私に、幸村君は。
「紫帆、良い度胸だね。
別に俺は、嫌がる君を犯すのも楽しいからどっちでもいいんだけど」
「きゃあああ! 本気で申し訳ありません!」
ヤバイ! 笑ってるのに目が恐い! これは、本気で怒ってる……!
無意識に逃げ出そうとした私を素早く腕掴み、そのまま抱き寄せる。
「でも俺のこと嫌いなんでしょ?」
「好き! 幸村君大好き!」
「信じないよ」
もがいても運動音痴な私がテニスで鍛えてる男性に敵うはずもなく。
「ホンット! 愛してるもん!」
わたしはひたすらお膳立てを並べてこの恐怖から逃れようとした。
「…………そんなに俺に抱かれるのは嫌かい」
このノリで、そんな悲しまれるとは思わなかった私は内心焦った。許されたいと思ったが、好きっていう気持ちは本当だったから。
「え……?」
「しかも、俺と二人で過ごしたくないくらい嫌なんだろう」
なんで、伝わらないんだろう。お互い誤解して、すれ違ってばっかりで。
本当は、幸村君が二人で過ごしたいって思ってくれていたことが分かって嬉しかった。でも怖かった。今までの関係が崩れるんじゃないかって、だから、居心地の良いテニス部を再度求めてしまったんだ。
「……ごめん」
今まで何度と吐いた謝罪の言葉。でもこれには今まで以上に重みがあって。それに幸村君はようやく腕の力を緩めてくれた。でもまだ放しはしないようだ。
「いいよ。ただしクリスマスは俺の家で祝おうね。これ決定だから」
「な、なんで?」
「ふふ、なんでだろうね? ああそうそう、プレゼントなんて買わなくていいよ。好きに貰うから」
やっぱり私の彼は強い。
END
20111222
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