計算などない


「あ、柳君」
放課後、教室にはまばらに人が残っている中、紫帆はぼうっと窓の景色を眺めていた。柳が肩を叩いてくれなかったら完全下校にも気づかなかったかもしれない。

「どうした麻倉、疲れているようだな」
何度溜息をすれば気が済むんだ、どうやら柳は一分以上紫帆の後ろにいたらしい。もっと早く声をかけてくれても良かったんだけど。




「私ね、初めてテニス部を見たときどうして真田君が部長じゃないのか疑問だったの。ある意味トップに立つ者って実力以上に皆を引っ張っていく威厳や微かな弱みとか必要でしょ。
でもね、昨日ようやく精市が神の子って呼ばれる所以を知ったわ…………」
「そうか……別に精市の異名はテニスにおいてであり性行為とは関係ないがな」
「ややや柳君! そんなことハッキリ言わないで!!」

ていうか私そんなこと話してないのに何で分かったの?! 紫帆はすぐ考えが顔に出るためデータマンでなくても分かるものなのだが当の本人は不思議でならない。
悩んでいた内容は柳が予想していた通り。紫帆は昨日彼氏の幸村にお持ち帰りされた。明日も学校があるから嫌だと渋っても聞く耳を持たなかった。お蔭で紫帆は今日一日怠くて授業もロクに聞いていない。唯一の救いは体育がなかったことくらいだろう。
付き合う前は優しそうで綺麗な人、くらいに思っていたのにまさか魔王クラスの人物だったとは……。






「性行為がどうしたって?」
「ぎゃ、精市?!」

噂をすれば魔王君臨。
「可愛くない叫び声だね、そんなところも可愛いけど」
狼狽える紫帆を置いて柳は冷静に幸村に挨拶する。



「精市、昨日はとても楽しかったと麻倉が俺に惚気てきて敵わん。教育が足りんようだな」
な!
「それはすまないね蓮二。苦労をかけた。紫帆には僕から厳しく言い聞かせておくよ」
慌てて逃げようと紫帆が動く前にがっしりと腕を掴む幸村。捕まえるどころか腕が折れそうに痛い。でも学校でなんて絶対嫌だ!

「逃がすわけないだろ。
……ああ柳、すまないが部活には遅れていくと皆に言っておいてくれ」
「わかった。だが部活には顔を出すくらいしろよ、皆に面目が立たないからな」
「恩に着るよ」




「柳君の裏切り者ぉー!!」




紫帆の叫びが虚しく響き渡った。



END

幸村は裏か一般かアンケートに表記分けしていなかったので中間(?)にしてみました。
20111010


- 78 -



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -