今年は二人で
今年の自分の誕生日は日曜日、しかも大会が終わったことにより部活もほんの少しだけゆとりが出て、なんとなんと練習は午前のみ。
一端家に帰り、急いで着替えて駅に向かう。だって今日は――
「赤也ー、ちょっと遅刻だよ」
「す、すみません紫帆先輩!」
「いいよ、今日は赤也が主役だから許してあげる」
大好きな紫帆先輩とデートだからだ。
大会後、先輩も三年生だからマネージャー業を一応卒業する形になる。そうするともう話すことなんてなくなるかもしれない。それが嫌で顔を赤くしながら告白したら、「可愛いね」ってOKされた。
「でもラッキーだなぁ。部活が朝だけなんて、大会終わったとはいえ先輩皆練習に来てるのに」
「私が赤也と二人でいたかったから、幸村君達に無理言っちゃった」
「え?」
「ごめん。テニスしたかった?」
そんな、紫帆先輩が部長に……? そんなこと自分がしたら即刻拒否する癖に、部長も先輩には甘いなあ。
「そ、そんなことないっす! 今日くらい紫帆先輩と一緒に……」
「良かった」
ふんわり笑われると、こっちが照れる。告白時から多分自分は子供扱いされているのだろうし、そうされても仕方がない面もある。でもたまには男らしい面を見せて、頼ってもらえるようになりたい。
「じゃあ行こうか」
「あーやっぱり負けちゃったか。残念!」
何故か自然な足の赴きで着いた場所はゲームセンター。紫帆が入るイメージを全く持っていない赤也だったが、普通に手を引いて紫帆は入っていった。そしてなりゆきでマリオカートの対戦に突入。勝ったとはいえ紫帆だってどう見ても慣れた手つき。
「先輩結構ゲームやるんスか?」
「うーん。というか赤也がゲーム好きっていうから、ちょっとかじってみたんだけど難しいね」
俺のために……?
「ていうかね、この後のプランについてなんだけど」
操縦席から降り、荷物を取る、ただ何気ない仕草なのに。
「どこかのレストランに入ってもいいんだけどね、私、何か作ってあげたいなって思ってさ」
髪が靡くのが綺麗でつい見とれてしまう。
「プレゼント、ケーキ作ったんだよね」
ヤバい、顔ふやけそう。
「でもケーキ持ってきて崩れたら嫌でしょ? だから置いてきちゃったの」
ていうか今何の話してるっけ? ヤベー聞いてなかった!
「と言うわけで、家おいでよ」
「へ、家……? って、先輩の?」
なんかすっごく話進展してるんですけどー!!!
「そうだよ。親いないから安心して。それに部屋の飾り付けとかすっごく頑張ったんだから!」
赤也は紫帆の家に入ったことは一度もない。逆もないのに、そんな、家に入るとか……本当にいいのだろうか。
「それに、今日は赤也の誕生日だから、好きなことしていいよ?」
「なっ!」
なんてね、とチロリと舌を出す紫帆は可愛くて、自分よりよっぽど悪魔にすら見える。まあ紫帆の場合は悪魔というより小悪魔なのだが。
「赤也、大好きだよ」
とりあえず、今日自分は理性を保って過ごせるだろうか、そんな心配をしながらも有難く家に訪問することにした。
END
20110925
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