目撃現場
遅刻した。だが今週は風紀委員の見回り期間。真田に見つかれば朝はともかく部活中にも延々と説教たられること間違いなしだ。それはさすがに勘弁なので、人気のない箇所の塀を乗り越え侵入することにした。万が一のことを考え、他に遅刻していてもおかしくないブン太の変装をしておく。
「なーにしてるのかな仁王君」
天から降り注ぐ声。仁王立ちで立ち塞がる一人の風紀委員、紫帆。
「何言ってるんだよぃ、クラスメイト俺の顔忘れちまったのか?」
「ブン太は今朝私と話して教室に入ってたけど?
もしくはそのカバンの中身の九割がお菓子だったら信じてあげなくもないわ」
当然そのお菓子は没収だけどね、と勝ち誇ったように笑う紫帆。
そんな菓子など当然持っているわけない。
「…………朝から面倒臭いのぉ」
「それはこっちの台詞よ!」
まるで私のせいかのように白々しい溜め息を吐き、変装を外す。そんな余裕あるなら本気で走れば間に合ったのではないだろうか。
……全く、遅刻どころかそれを他人に押し付けようだなんて。
「真田に言い付け、」
小言はうんざりなので紫帆に堂々とキスをかました。
思惑通り大人しくなる紫帆。目がすごく丸くなっている。
「なぁ紫帆、許してよ」
そう、俺達は。
風紀委員と遅刻生徒ではなく、彼氏と彼女だから。
「……今回だけだから」
紫帆は結局、俺に甘い。
END
企画サイト「share view」様へ提出
20110904
素材サイト様「YODO」
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