甘酸っぱい

「クラスはここだね」
周助に連れてきてもらったクラスにはもう人がいっぱいいて
みんな新しい友達作りが始まっているようだった
「とりあえず自分の席は決まってるみたいだから確認しに行こうぜぃ」
綺麗に並んだ机を縫うように進むブンちゃんについて行って
黒板に貼られた席順を確認すると
「わ!窓側の一番後ろだ!!」
「なにぃ?!」
悔しそうな顔してるけど、ブンちゃんだって一つ前なんだからいいじゃない

弾む足取りを抑えながら自分の席に向かう
天気の良い真っ青な空を見ながら歩いていたせいか
足元にある鞄に気が付かなくて視界が急に揺れる
「あ、おい!ナマエ!!」
(あ、わわわわ…!!)
焦ったブンちゃんの声を聴いて目をつぶる

でもそのあとに来たのは体が床にたたきつけられる感触ではなく
暖かくて柔らかい感触だった

「大丈夫?」
耳元で聞こえた声に顔を上げれば
「前見て歩かな危ないで」
自分の視界のすぐ先に見えたやさしい視線
抱きかかえてくれた力強い腕
ほんのり香るせっけんの香り

その瞬間に
自分に雷が落ちたような衝撃(いや誇張じゃなくてね)

「お、おい!大丈夫かよ」
「…」
焦ったブンちゃんと無表情の周助が近寄ってきてくれて
私も雷のシビレから解放された
「う、うん。大丈夫…」
そっと抱きかかえられていた腕から離れて
改めて顔を合わせる
綺麗なミルクティー色のサラサラ髪の毛
整った顔立ち
やさしい視線
(左手にまかれた包帯が少し気になるけれど)


「あ、ありがとうございます」
お礼を言えばふっと綻ぶ口元
「いや、大事がなくて良かったわ」
すっと視線を外に向けて
「今日はええ天気やから外見てたんやろうけど、下もきちんと確認せな危ないで」
外から戻ってきた視線を向けられて目があった瞬間に自分の体温が上がるのか分かった
思わず俯けば「どこか痛いん?」って心配までしてくれて
「い、いえっ!大丈夫です…!!」
「…それならええけど」

よしよし
頭を撫でられて体温はさらに上昇
私、どうしちゃったの…?!


「なぁ、不二」
「なんだい?」
「俺たち、完全に空気だよな」
「…クスッ、そうみたいだね。気に食わないけど」
「…っ!(開眼すんな!怖ェ…!!)」

彼は私の隣の席で名前は白石蔵ノ介君
大阪出身で中学校からここに来たらしい
「いろいろと分からん事も多いと思うけど、そん時は世話になると思うからよろしく」
ニコリと微笑まれて本日3回目の体温上昇を体感した



家に帰ってリビングで蓮母さんに相談してみた
「でね、白石君を見るとぐーんって熱くなるし、心臓がどきどきするの」
「ふむ」
「ねぇ蓮母さん、これってなんでかなぁ?」
蓮母さんは少し考えた後、にっこり微笑んで答えをくれた
「…それは、恋だな」
「…こ、恋だと?!」
隣にいた弦父さんが大きな声で叫んだ瞬間に
2階から響く複数の足音
階段を転げるように降りてきた兄弟たちにかわるがわる質問をされて
自分が恋をしたんだということが現実味を帯びてきた

はつ
こい



(ちょっとブン太、白石って誰?)
(お、同じクラスのナマエの隣の席の男子)
(ふぅん…いつかツラ拝みにいかなきゃな)
(…精兄、キャラ違うぜよ)

(ナマエの初恋記念に今日は赤飯にするか)
(ワーイ!)
((((((…))))))







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