祝!入学
「ブンちゃーん!行こう!」
「おぅ!」
麗らかな春の陽射しを身体いっぱいに浴びて、二人は新品の制服に身を包み家を飛び出した。
今日は二人の通う中学校の入学式だ。六年間お世話になっていたランドセルが背中に無いのがなんとも言えない少しの寂しさを感じたが、それ以上に楽しみで胸がいっぱいだった。初めて着る制服はまだ真新しく、昨日散々精市にからかわれた。精市の言うとおりまだ服に着せられている感じが否めないが、そんなのはあっという間に消えるだろう。
「入学式弦父さんと蓮母さん来るって言ってたねー」
「昨日から蓮母さんカメラとビデオ準備してたもんなぁ…」
二人でしみじみと話していると、視界に中学校の校舎が見えてきた。あれがこれから通う学校かぁ、と見ながら歩いているとポンッと肩に手が乗せられた。
「ナマエ、おはよう。ブン太も」
「周助!おっはよー」
「オマケみたいに言うなよぃ!」
同じ制服を身に纏った隣の家の不二周助は、にこやかな笑みを浮かべて二人と並ぶように歩き出した。
小学校の頃とは少し違う登校風景。
行き慣れた道でもないし、いつも一緒にいた赤也も裕太もいない。
「赤也君たちいないとなんだか静かだね」
「あぁ、そうだね。家を出るとき裕太がずっと不機嫌だったよ」
苦笑しながらそう言う周助に、ブン太もうんうんと頷く。
「赤也なんてさー、ナマエから離れなくてよ!すんげぇめんどくさかったんだよぃ!」
「あはは…でも裕太君いるなら安心だよ」
「家が隣なのは変わらないしね、いつでも会えるよ」
そんな事を言いながら歩いていると、見えてきたのは小学校よりも大きな校舎。桜に囲まれた校舎の中には同じような真新しい制服に包まれた人が沢山いる。その中に混じるように入り、クラスの表から自分の名前を探す。
「んー……、あ!あったよぃ!ナマエと俺同じクラスだぜ!?」
「嘘!?」
普通同じクラスに双子がなるなんてことあるんだろうか…。詳しい事は知らないけれど。
「僕も一緒みたい」
周助の指差した先にはナマエ達と同じ列の下に不二周助の名前が。つまり三人共同じクラスになったのだ。
「やったー!まさか一緒になれるとは思ってなかったから嬉しいな」
「僕はそうは思ってなかったけど、ブン太も一緒なのには驚きだよ」
「おい!!」
思えば周助とは昔からクラスが離れた事が無い。ナマエがなんだかすごいなぁと思っている隣で、周助は終始ニコニコ笑っていた。
体育館で式が始まるため、ゾロゾロと列に並ぶ。ピアノの音楽が聞こえてきたと思ったら列が進み出す。入場だ。
(なんだか緊張する、なぁ……)
ぎゅっと無意識に拳を握る。この前の卒業式も緊張したけれど、今の方がドキドキだ。友達は出来るかな?とか勉強難しいかな?とか不安が沸々と胸に浮かんでくる。
ぎゅ、
右手にぬくもりを感じて顔を上げると満面の笑みのブン太がいて。ナマエの中の不安の色がフッと和らいだ。
「ほら、行くぜぃ!」
「ブンちゃん…、うん!」
やはり唯一無二の片割れなのだ。絶対的な安心が生まれ、二人は前を向いて足を踏み出した。
中学生に
なりました (カシャッ!パシャ!!)(ナマエー!こっち向いて!)(精兄!?それになんで皆揃って!?)(ナマエの晴れ姿を俺が見ないわけにはいかんぜよ)(ブン太のばかー!)(な!?赤也呼び捨てんな!)(お、おい!今式の最中(黙らんかー!!)(弦一郎の声で式が中断された確率96%)(……はぁ)
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