俺の妹が可愛いわけがある
僕の名前は精市。気分が良いから今日は僕目線で話そうと思う。僕の家は大家族で、兄が二人に弟が三人、それに妹が一人いる。男だらけのこの家の紅一点、ナマエは本当に可愛い。目にいれても痛くないとはこの事だ。
ナマエとブン太が生まれてきた時、家族皆初めての女の子に家族中が大騒ぎになった。その当時(2歳)、僕は面倒臭いと思ってたから、別に興味を示してなかったんだ。
「まさ、にぃに!!」
「初めてお兄さんになるのが嬉しいんですね」
一つ下で最近よく喋れるようになったマサは、いつもだとなかなか見せない笑顔を振りまいて、上機嫌で母さんと新しい家族が病院から帰ってくるのを楽しみにしていた。僕の方は確かお花に水あげしながらなんとも思わずに過ごしていたような気がする。ヒロ兄はマサを微笑ましそうに見てるし、ジャックは時計をチラチラ確認してそわそわしてる。父さんなんかさっきから激しい貧乏揺すりで、苛ついたからどついてやった。
なにがそんなに嬉しいんだ、と小さい僕は不思議に思っていた。
そんな時玄関のドアがガチャリと開いた音がした。
「おかえりーー!!」
今では想像もつかない笑顔と大きな声でトタトタと玄関に走り出したマサを合図に、僕以外の皆が玄関へと駆け出した。僕用の如雨露を置くとリビングの扉が開いた。入ってきた母さんの腕にはちっちゃいのがふたつ。母さんは背が高いからなんにも見えない。後ろからゾロゾロとついてくる皆。よく見たら父さん泣いてる。……気持ち悪いな。
「はやくー!みたいぜよー!」
小さな手を伸ばしたマサに母さんがしゃがみ込んで腕の中を見せた。
「男の子と女の子だぞ」
「ちっこいのー」
「妹か……!」
「可愛いですね…」
「名前はブン太とナマエと決めてある」
わらわらと集まって行く皆になんだか少し気分が良くなかった。今思えば幼心に寂しく思っていたのだろう。結局俺はその輪に入らずに終わった。
そうして、少し時間が経てばブン太のほうがお腹が空いたのか大泣きし出して皆慌ててキッチンへと向かった。ぽつんと残ったのは俺ともう一人。誰もいないから、近づいてみる。
「ちっちゃい……」
生まれたばかりの赤ちゃんにそんな言葉が自然と出た。ゆっくりと手を伸ばすと、寝ているナマエが俺の指をぎゅっと握った。その頃は把握反射なんて知らなかったから、ナマエが俺と離れたくないのかと思った。ぎゅっと掴む手が意外に力強くてびっくりしたのを覚えてる。
「…………おれ、せーいち。おにいちゃんだよ」
そう言うと、少し間を置いてからナマエがふにゃりと笑った。その突如、電撃がビリビリと身体を走った。
ああ、俺はこの子に会う為に生まれてきたんだ………
「だから、ナマエに彼氏なんて言語道断だよ」
「ちょっと待って、精兄俺は?」
「別に?ナマエが生まれてきた事に感謝してるだけだけど」
「ひでええええ!!」
『せ、精兄……』
今ではこんなに大きくなっちゃって、可愛いもんだから、周助やら白石やらに狙われて、俺は本当に気が気じゃないよ……
俺の妹がかわいい
わけがある
まぁ、取り敢えず……
俺に認められなきゃナマエは何人たりとも渡さないよ。