家族一の甘えたさん
放課後クラスの男の子と喋っていて帰る様子のないブンちゃんを置いて一人で帰ることにした。帰りに寄り道をして近くのコンビニでお菓子を漁る。ブンちゃんと買いにいったら、殆ど食べらちゃうもん。
お菓子を買ってレジ袋片手に家へ向かうと、なんだか誰かから呼ばれた気がした。
「姉ちゃーん!」
『ん?グフッ!?』
後ろから腰に鈍い衝撃を受けて、変な声が出てしまった。どうやら聞き間違いではなかったみたいで、首だけ振り向くと見えたのは黒いもじゃもじゃ。
『赤也くん?』
「姉ちゃん全然気付かないから俺ここまで来たんだぜ!」
そう言って指差したのは、よく私も遊んでいた公園。公園を見てみると見知った顔がちらほら。あ、誰かが走ってくる……
「ナマエさーん!!!」
一生懸命走ってきたのは、赤也の同級生の鳳長太郎君、通称チョタくん。まだ小学生なのに私より少し身長が大きいチョタくんだけど、ものすごく甘えたがりで、すぐ抱きついてくる。例えればゴールデンレトリバー?
「おい!長太郎姉ちゃんに抱きつくなよ!!」
そう言って私から離れようとせず、寧ろぎゅうぎゅう力を入れる赤也。家族でいる時はあんまり甘えてこないけど、結構甘えたがりなんだよなぁ…… そんなとこが可愛くて仕方がないのだけど。
でもまぁ、今は人前だし、ね。
『ほら赤也、チョタくんにそんな事言っちゃダメでしょ?』
「え」
「ナマエさーん!」
大きい身長を活かして赤也をペリッと剥がしたチョタくんは、私に抱きついた。身長が同じくらいだから包容力があってまだ小さかった昔とはなんだか立場が逆になっているような気が……
「あぁっ!長太郎このヤロー!離れろ!!」
「いいじゃないですか!赤也はいっつも一緒なんだから!」
「ハァ……長太郎……」
赤也くんとチョタくんが言い合ってるところだったが、ぐいっといきなりチョタくんが離れていく。その後ろを見ればチョタくんの首根っこを掴んだ、これまた赤也くんの友達の若くん。
『若くんありがとう』
「いえ……、長太郎が迷惑かけてすみません」
「迷惑かけてないよ!ね?ナマエさん!」
いつも仲良しなこの3人組。赤也くんは賑やかで煩くて、チョタくんは優しくて甘えたがり。そんな二人を不器用ながらも見守ってる若くん。なんだか良い友達関係だなぁ… いつもはここに裕太くんもいるけども。
「ナマエさん!!」
『うわあ!チョタくん?』
「今俺たちの事忘れてたでしょう?」
『忘れてないよ、仲良しだなぁと思ってただけ』
そう言うと、チョタくんも日吉くんも照れたように顔を赤らめた。
今まではブンちゃんも周助も小学生だったから、皆で遊んでいたけれど、やっぱり中学生は授業も長いしこれからは部活も忙しくなる。そう思うとちょっぴり寂しくなった。
夕方の鐘の音が聞こえてくる。気付いたら空が真っ赤で、お別れの時間だ。本当に時間はあっという間で悲しくなる。
『まだチャイム鳴るの早いねー』
「せっかくナマエさんに会えたのに…」
そう言って、しょぼんとするチョタくんは、やっぱり可愛い。よしよしと頭を撫でると、側で不貞腐れてる赤也の手を取る。
『じゃあまた今度皆でうちに遊びに来なよ!待ってるから』
「!絶対ですよ!!」
「……楽しみにしときます」
そうして二人と別れて赤也くんと家に帰るけど、なんだか赤也くんはさっきから一言も話さない。いつもなら煩いくらいに話すのに。
『あーかやくーん?』
「……」
『あーかやっ!』
わしゃわしゃと髪を触ると赤也が腰に抱きついてきた。いつにも増して甘えたさんだなぁ……
「姉ちゃんのバカ!」
『(あー、始まっちゃった…)ごめんね?赤也くん』
「ブン兄も精兄もマサ兄もずるい!!」
きっと睨む赤也くんの目には涙が溜まっていて、不謹慎にも可愛い。…ごめんね、赤也くん!
「お、俺だって姉ちゃんと一緒が良かったのに!!」
その言葉にズキューンときたのは仕方がないと思う。
抱きついている赤也くんを抱きしめ返してから、買ってきた棒付きの飴を取り出す。
『私が一番可愛いって思うのは赤也くんだよ』
「……」
『だって私のたった一人の弟だもん!』
「……ね、ぇちゃー!!」
差し出した飴には見向きもせず、ぐりぐりと頭を押し付けて抱きつく赤也くんは、やっぱりまだまだ甘えたな小学生だなぁ
こんな姿恥ずかしいらしくて、他の人には見せないけど。
自慢の可愛い
弟です