小説 | ナノ




君に言えなかったことがある。

何でも話せる幼なじみ。

唯と俺はそんな関係だったよね。

だけど。

じつは、君に伝えてなかったことがあります。



"寂しい"



歳をともに重ねていってるはずなのに、なぜか君の方が大人っぽくて、君が俺よりも先に進んでいた気がして、すごく寂しかった。

俺も一緒に進んでいたかった。

君の隣で君と一緒に進みたかったんだ。



"ごめん"



いつだって謝るのは君で。

俺からは絶対謝らなかった。

俺が折れないって分かってるから、優しい君はいつだって自分が悪いと折れてた。

俺が悪いってわかってたけど、意地でも謝りたくなかったんだ。

それも全て含めて、ごめん。



"行かないで"



その言葉は何度も胸の奥にしまってた。





ーー「あたしね、一人暮らし、するんだ」


離れたところに行ってしまおうとしていた君に。


ーー「好きな人ができたの!!」


そういって、デートに何回も行く君にも。

本当は、"行かないで"って言いたくなった。

大人になれなくて。

子供のように駄々こねて、そうやって生きてた。




"好き"





この言葉は、君にちゃんと伝えたかった。

ちゃんと、届いていたかな?

俺が生まれたとき、君は小学校一年生で。

気付けば、君の年齢を越してました。


「キャラメル!!!!」


出来ることなら、言葉で伝えたいけど、俺にはできないので、せめてここに残したいと思います。


「やだっ…!!やだって…!!」


泣かないで。

笑ってよ、唯。


「キャラメル死んじゃ…っ、やだ…ぁっ!!」


ごめんね、それは聞けないよ。

俺は、唯よりも歳を取りやすいんだ。


「キャラメル…っ、キャラ…メルぅ…!!」


うん、なあに?


「あたしと一緒に、旅行、行こうよっ…!!」


唯となら、どこだって楽しいよ。


「キャラメルの大好きな…っ、ボール遊び、しようよ…っ」


俺がボール遊びを好きだった理由、知らないでしょ?

唯と初めて遊んだ遊びだからだよ。


「っ、やだ!!
キャラメル、目閉じちゃだめ!!!!」


…ごめんね、唯。

もう、時間切れ、だ。


「やだやだやだ!!!!
キャラメルっ!!!!」



ごめんね、ありがとう。






















大好き、だよ。
























…バイバイ、唯。










<もしも生まれ変われるのなら、君に言葉で伝えられる人間になりたい>




"確かに恋だった"様から
『君に言えなかったことがある』でした。


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