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崩壊



「津奈! あんたまた学校途中でサボったんだって?」

ドタドタと階段を上る音を立ててノックもせずに思いっきりドアを開けられる。

「ちょ、ノックくらいしてよ!」

「そんなことは良いでしょ親子なんだから、それにあんた将来どうするの?」

腕を組みながら話す母さん、あーまた始まったよロマンチックタイムが。
長くなるから嫌なんだよね。
私は漫画を読みながら適当に「べつにぃ」と返事をした。

「母さんはね、別にいい高校や大学に行けって言ってるわけじゃないのよ?」

「何度も聞きました〜」

今度は恥ずかしいセリフが来るぞと思いながら耳を塞いだ。

「あんたみたいに退屈そうに暮らしてても一生、楽しく暮らしても一生なのよ! あぁ生きてるって素晴らしい! って感じながら生きて欲しいのよ!」

「あーはいはい、そう言うこと人前で言わないでよね。恥ずかし思いするの私なんだから」

耳を塞いだ事にムッとしたのか母さんはいつもより大きな声で話した。
ちくしょー。

「ま……ツっちゃん、今日家庭教師の先生来るの」

手を組みながら嬉しそうに話す母さん。

「って家庭教師!?」

ガバッと立ち上がる。

「今日ポストに面白いチラシが入っててね、お子様を次世代のニューリーダーに育てます。学年・教科は問わず、リボーン
ステキでしょ? こんなうたい文句見た事ないわ」

嬉々とした表情でチラシを読み上げる。
うさんくさいだろどう見ても!
あー母さん天然だから、こう言うのにカモにされるんだってば。

「聞こえてるわよ」

「本当の事じゃん」

「きっと凄腕の青年実業家庭教師よ! 母さんこう言う先生に見て欲しかったの」

勝手にイメージ作んない方が良いと思うけど。

「それに私運動もまあまあ出来るし、成績だって悪くないんだよ!? 家庭教師なんて絶対嫌だからね!」


「ちゃおス」


突然足元から出現した赤ちゃん。
ってはぁ!?
スーツ着てるし、帽子にカメレオン乗っけてるぞ!

私と母さんは呆然と突如現れた赤ちゃんを見つめた。

「3時間早く来ちまったが特別に見てやるぞ」

「ボク……どこの子?」

その赤ちゃんは赤ちゃんとは思えないような流暢なしゃべり方で淡白に話した。

「ん? 俺は家庭教師のリボーン」

ふざけてるのか?
いきなり人の家に乗り込んできて、はっきり言うと私は子供があんまり好きじゃない。

「キミ……お母さんは?」

「お前が津奈か」

「まぁそうだけど、赤ちゃんに教わることはないよ」

泣かれるか。
そう思いながら少し冷たい目でリボーンと名乗った赤ちゃんに言い放った。
母さんは隣で「大人気ないわよー」なんて呑気に私に耳打ちをする。

そう言った後、いきなりリボンタイを掴まれた。

「え?」

直後、私は生まれて初めて赤ちゃんからお腹にキックをされたのだった。
おおい、これ赤ちゃんのキックじゃないぞ!
何者だよお前。

とか思っているうちに私ははしたなくも白目を向いて倒れた。
まぁ正確には赤ちゃんに支えられたが。
私体重重いと思うけど?
本当に赤ちゃんかよ、なんて疑問を浮かべてしまう。


「あ、あれ? なんだったんだ……?」

お腹に走る激痛を両手で押さえながら目を覚ます。
こ、この赤ちゃん呑気に寝てやがる!
もうこのさい赤ん坊でいいや。
てか母さんどこいった、逃げやがってー自分で撒いた種じゃないか。

「……逃げるか」

逃げるが勝ち、そう思いながら赤ん坊を起こさないようにそろそろと音を立てずに母さんの元に逃げようと試みる。
だがそれは甘かったようだ。

「おい、どこ行くつもりだ?」

「……げっ」

「げっとはなんだ、げっとは。オレに隙は無いぞ、本職は殺し屋だからな」

持っていたカバンから何かを出しカチャカチャと組み立てる。
あれ、これって銃……。
モデルガン?

「オレの本当の仕事はお前をマフィアのボスにする事だ」

「は? ま、マフィア?」

何言ってんだコイツ、赤ん坊の癖にもう厨二病患ってるよ。
あーいたた、将来が怖いわー。

「聞こえてるぞ」

「え、うそ、声に出してた?」

「オレは読心術を習得している、やり方はオレに任されてんだ」

間を置き構えていた銃をチャキっと私のおでこにくっつけた。

「一発撃っとくか?」

「なっ、モデルガンだからってビビるもんはビビるの! 早く退けろ!」

「可愛くねぇな」

「可愛くなくて結構」

ぐるるるるるる、お腹の鳴る音に銃を見た後のせいかビクッとしてしまった。
赤ん坊は「でも今じゃない、あばよ」とそういうと足早に去っていった。
もうくんな、その言葉をごくりと飲み込み心の中で叫んだ。

「あーもう、これで母さんも懲りただろ……」

はぁ、とため息をつきながらあの時間は何だったのかと思いにふける。

「ツっちゃん、ご飯は?」

リビングで料理の支度をしていた母さんにもため息をついた。

「いらない、外でなんか食べるからお金ちょーだい。後あの家庭教師だけど」

「ん?」

え、あの声は……。
バッと振り向くと赤ん坊はうちでご飯を食べていた。

「リボーン君、津奈のその捻くれた性格が治るまで住み込む契約なの」

「はあぁぁ!?」

「津奈、近所迷惑だぞ」

迷惑の根源はお前だっつーの! と声を大にして言いたいところだが本当にご近所迷惑になってしまうのでそれはぐっと控えた。
お? 今日は私の好きなマグロのお刺身じゃないか。

「……っやっぱ家で食べる」

「はいはい」

ニコニコとしながらご飯をよそいその上にマグロを乗っけてくれる。
やっぱり私の母さんだ、分かってるな。
私は丼ものが超のつく程好きだ、だからご飯の上に乗せれて合うものならなんでも丼にする。

上から醤油をかけて無言で食べた。

(気まず……でも美味しい)




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