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起床



「ぉぃ」

「ぉい」

「カス」

バッ。
お兄ちゃんの声で目が覚めた。
カスという単語で起きてしまったのがアレだが気にしないことにした。

「おはよーお兄ちゃん」

「……あぁ、昨日は起きれるとほざいていやがった癖にな」

そう言うとお兄ちゃんは一階に降りていった。
うぅ、反論はできない。
とりあえず着替えようと机の上に置いてある普段着に着替える。

まだ寝起きのぼーっとした目をこすりながら服を脱ぐ。
ふと時計が目に入った。

「はっ!?」

時計の針がさしていたのは4時。
よ、4時ぃ!?
出発の2時間前じゃん!
お兄ちゃんのバカ……。

でも起きてしまったのは仕方ない。
そう思いながら着替えた。
水色の半袖のシャツにグレーの半ズボン。
靴下は暑いので履かずにクロックスを履こう。

「おはよー」

トントンと階段を降りリビングのドアを開ける。

「あら、今日は早起きね、おはよう」

「お、起きたか、おはよー」

「おはよう、津奈ちゃん」

あれ、皆早起きだー。
私いつも7時過ぎにしか起きられないからわかんなかったや。
それよりも喉が乾く。

「お母さんお茶ー」

「はいはい」

そう言いながらお母さんは冷たい麦茶を私のお気に入りのコップに注いで渡す。
それを一気にごくりと飲み干した。
ふー、と一息つき口元を拭う。

そういえばお兄ちゃんはどこだろう、と辺りを見回す。
外を見ながらお兄ちゃんはソファに座っていた。
すぐさまお兄ちゃんの元に駆け寄る。

「お兄ちゃん!」

「くっつくな」

「んー♪」

私はお兄ちゃんの膝の上に無遠慮に乗った。
固いなぁ、鍛えてるのかな。

「ふふ、1日で仲良くなった様だね」

「うん!」

「ちっ、何を見てやがるんだジジイは……」

おじいちゃんに仲良くなったと言われ嬉しい気分になった。
まぁお兄ちゃんの発言は無視して。
改めてお兄ちゃんの顔をじっと見る。

「……なんだ」

「フサフサ〜」

髪にある羽飾りを触る。
なんか動物の尻尾みたいな物もついている。
しばらく触っているとお兄ちゃんは「触んな」と私の手を叩いた。

「ちぇっ」

「おい津奈〜、持ってくもん詰めたか?」

「あ、チェックしてくる!」

お父さんの言葉にはっとしてお兄ちゃんの膝から飛び降り、二階の自分の部屋のドアを開ける。
持って行くのは水色の普通のリュックとお父さんから貰った黒の大きな旅行用のバック。

水色のバックにはいつも使うようなもの。
黒い大きなバックの方には着替えや色々なものを入れてある。

最終確認と称しまずは水色のバックから中身を確認する。
お気に入りのコップは後で新聞紙に包んで入れるとしてクレヨンや色鉛筆とスケッチブック。
ロイヤルミルクティーのペットボトルに必要最低限のお金が入った財布。
このくらいだ。

一方の黒い大きなバックには一ヶ月分の着替えが入っている。
もそもそとバックの中をあさり無い物がないかチェックする。
うん、オッケー!

この二つはあとでお父さんに運んでもらうので私はまた一階に戻った。

「オッケーだった!」

「そうかそうか、あと1時間30分もあるんだから寝ててもいいぞ?」

「起きてる!」

お父さんは「そうか」と言って微笑んだ。
とは言ったもののする事がない。
何をしようかなと辺りを見回す。

お、人生ゲームだ!
これ好きなんだよね。
お母さんからは「人生ゲームがもう出来るなんて天才だわ!」なんて言われたけどよく分かんない。
でもいつもお母さんとやってるけど当たり前だけど惨敗だからなぁ。
うん、お兄ちゃんとやろう。

「お兄ちゃん! 人生ゲームやろ!」

人生ゲームが入った箱を持ちリビングの広いスペースに置く。
お兄ちゃんは「ガキの癖に人生ゲームなんてやるのか」なんて鼻で笑った。
なんかムカつく……。

「津奈は人生ゲームが出来るなんて天才だなぁ!」

お父さん……さすが夫婦。
似た者同士だ。
その言葉にえへへと笑った。

「津奈ちゃんは賢いねぇ」

「うん!」

「どうせ負ける癖に何をほざいてやがる」

ムッとして「私が勝つー!」と言った。


「じゃあじゃんけんね!」

一通り準備が整い皆でじゃんけんをする。
お父さんもやると言い出したので私とお兄ちゃんとお父さんの三人でやることにした。
勝てる自信は正直ないけど……。

「じゃーんけんぽい!」

私がチョキでお父さんがパーでお兄ちゃんもパー。
やった私の一人勝ち!

「津奈はじゃんけん強いなぁ」

「お父さんくっつかないでー」

じょりじょりとヒゲが頬をこする。
痛い! 痛いって……。

「私この水色の車にする!」

「じゃあ俺は白だ」

私は水色の車を手に取りお父さんは白の車、お兄ちゃんは無言で黒の車を取った。
黒好きなんだ、覚えておこう。
私は女だからピンクのピンをさし、お父さんとお兄ちゃんは青のピンをさした。

三つの車をスタート地点に置き皆に最初の資金の2500$を配る。

「んじゃ私から!」

クルクルと言うよりはシャーという音を立てて回るルーレット。
いけ、10いけ!

「あ〜〜3だぁ」

「ふっ」

お兄ちゃんに鼻で笑われた。
ちくしょー……。

「あ、会社に就職。お祝いに皆から1000$貰う」

止まったボードの字を読み上げ両手を二人に差し出す。
まぁ簡単にいえば1000$よこせ、のポーズだ。
二人は渋々と1000$を渡した。
やった、2700$になった!

「……次は俺か」

そう言うとルーレットを軽く回すお兄ちゃん。
あれ、その割には壊れそうなくらい回ってるんですが!?
は、はずれそうだよ……。
どんなパワーで回してんるんだ。

「おいザンザス、壊れるだろ。高かったんだぞー!」

「しるか」

「わ、スゴイ10だ!」

ルーレットの針がさす数字を見た途端機嫌が良くなり一気に10コマ進めるお兄ちゃん。

私は知らない、お兄ちゃんが10代目の10としても喜んでいたことを。

(それは後に知ることになる)




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