05
「あとは役者だけかー」
「撮影予定日まで時間ないんだけど見つかんねーのー?」
「イメージに合う人がいない…」
はあ、と大きなため息を3人で吐いた。
「恋愛って何だろうね…」
恋愛なんてしたことないのに恋愛を撮るなんて無謀すぎたかもしれない。
ぼーっと窓の外を見ていると、体育館のドアが少し開いていてバスケ部の練習風景が少し見えた。
1つのボールを数人が必死で追いかけていて、コートにいる全員がキラキラと眩しい。
黄瀬が真剣にボールを追いかけている姿から目が離せなかった。
太陽の光を浴びてキラキラと輝く金糸がまるで夢の中にいる気分にさせる。
黄瀬の楽しそうな顔が頭を占拠する。
「名前…?」
友人の声で夢の世界から現実に引き戻された。
「え…?ごめん。なんだっけ?」
「いや…。ぼーっと外眺めてて何見てんのかな、と思って」
「あーいや。あははは」
笑って誤魔化したけど内心ひやひやしていた。黄瀬があまりにもカッコ良く見えたなんて言えない。
そして、またひとつ面白いことを思いついた。
けれどこれは面白いことではなく、自分を見つめるための試練な気がした。
ついに撮影初日を迎えた。
昨日は色々考えていて寝れなかったせいで顔が酷いことになっていた。
「結局役者見つけれた?」
「と言うか、オレ達4人以外に人いないんだけど」
「え?役者さんいないの?」
黄瀬もビックリしている。
「ふふふ。そんなこともあろうかとプロを用意しておいた!」
そう言い黄瀬を指差した。
はぁ?と言う顔が3つ揃った。少し面白い風景だ。
「黄瀬は画面慣れしてるしなんせモデルだ!ピッタリじゃないか!!」
「い、いや何言ってるんスか…?」
「確かに黄瀬はモデルだしな」
「ああ。モデルだ」
「はあ?」
「それじゃ、頑張ってね!黄瀬!」
にっこりと笑って黄瀬の肩を叩き、撮影準備に取り掛かった。
撮影は順調に進み、最初は嫌がっていた黄瀬もなんやかんやで素直に応じてくれた。
事務所関係のややこしいことを避けるため、顔や黄瀬だと分かるところは絶対に映さないと注意した。
駅に佇む黄瀬はとても綺麗だった。画面の中の黄瀬も綺麗だが、それ以上にホンモノの黄瀬は綺麗だ。
自分が思っていた通りの映像が撮影できそうで、とても楽しみだ。