02

オレと黄瀬は席が前後だからと言って特に喋ることもなく、唯一喋る時はプリントの受け渡しくらいだ。
休憩時間は黄瀬は女子達に囲まれてきゃっきゃしているし、オレは友人たちのもとへ逃げている。
接点はほとんどなかった。
黄瀬がオレの名前を知っているかも怪しい。フルネームとは言わないから苗字だけでも知っていてもらいたいものだ。こんなにとばっちりを受けているのだから。


そんなある日、突然事件は起こった。
体育の授業で忌まわしき2人組みを作れと言われた。
オレがいつも行動しているのは3人組みだから1人余るわけで、気付けばオレが余りになっていた。
周りを見渡すともうすでに2人組みだらけであった。…黄瀬以外。
黄瀬とオレが余っているのだから、それは必然的に2人組みになる訳で…。
そもそもクラスで黄瀬をよく思っている男子はいないのだ。女子に囲まれてハーレム状態な黄瀬を羨むか、興味ないかのどちらかであった。
黄瀬もそのことを分かっているのか特に気にした様子はなかった。

「き、黄瀬、2人組みのペアいないよな?オレと組もう?」

女子がいないはずなのに視線が突き刺さってる気がする。

「いいけど」

黄瀬と2人組みになることになったのだ。


2人組みで何をするのかと言えば、体育の授業はサッカーなのでストレッチやパスの練習だ。


「黄瀬は運動部だからサッカーも上手そうだな」

無言は辛いので当たり障りのない会話をしようとしてみたが、

「まあ、見ればすぐできるっス」

すごく電波な返しをされた。見れば出来るって何だよ。
それから会話もなくストレッチは終わり、パスの練習に入った。

「苗字くんは何の部活に入ってるんスか?」

「え?」

まさか黄瀬から話しかけてくるとは思ってもいなくて大げさに反応してしまった。
黄瀬がオレの名前を知っていることにも驚いた。

「オ、オレは、帰宅部だよ」

「へー」

「黄瀬はバスケ部でレギュラーなんだろ?凄いな」

「…そんなことないよ」

「1年でレギュラーなんだから凄いと思うけどな」

「…色々あるんスよ」

「そうなんだ」

会話は続くわけもなく終わった。
その後は会話もなくパスをし体育の授業が終わった。


「で、黄瀬と2人組みはどうだったよ?」

ニヤニヤしながら友人2人が絡んでくる。

「会話が続きそうで続かなかったよ」

「へー」

「あの黄瀬と会話したんだー」

まあ、当たり障りのない会話だけどね。

「で、名前はコンテスト、どんなのにするか決めたか?」

「あー…まだぼんやりとしか考えてないなあ。スケジュール組むの頑張ってな」

「投げやりすぎて涙出る!!!早く決めないとスケジュール組めないから早くしろよ」

「うん」

持つべきものは理解ある友人だ!


次の日の朝、ぼーっと自分の席から外を見ていると、

「おはよう」

目の前の黄瀬に挨拶をされた。

「おはよう」

黄瀬の後ろにいる女子の目が怖すぎて顔はあんまり見れなかったが、黄瀬から初めて挨拶された。
その日から黄瀬に挨拶をされるようになり、体育の授業や化学で2人組みがあると一緒になるようになった。









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