れっつごー



「廉造、出かけるで!」

スパーンと壮快な音を立てて開かれた襖、そこから現れたのは兄の金造と、三日にして最早お馴染みと貸した#リオ#だった。

「廉造くんほら、準備してー」
「は?いや、ちょ、出かけるってどこいくん?」
「秘密ー」
「……はい?」
「おら廉造さっさと準備せんかい」

突然準備しろと言われても何をすれば良いのかも解る筈もなく、その後何度か問い質そうとするも帰ってくるのは似たような返答ばかり。仕方なく一先ず財布や携帯などの普段出掛ける際に必要な物をまとめ、相変わらず理不尽な兄に急かされながら家を出る。
外に出てみると父と兄の二人が待っていて、ますます意味が解らなくなった。なんだか彼女が家に来てから自分は振り回されてばかりだ。




「廉造くん。ついたよー」

「…ああ、はい……」

外に出て車に乗せられて、何も知らされてへん言うのに金兄に馬鹿にされて──そうしていつの間にか、眠ってしまっていたらしい。そう言えば今日は朝から妙に眠かった。

急かされるがまま外に出て辺りを見渡すと、まず視界に入ったのは青。それから浜辺でいちゃつく恋人達に子連れの家族、今まさに飛び込もうとしている若者──そう、つまり、海だった。俺は今海に来ていた。あかん本気で意味解らん。

「うっしゃ遊ぶでー!」
「こらまて金造!」

兄がはしゃいで浜辺に向かうのを、まるで他人事の様に眺める。金髪眩しいなあとかいつの間に着替えたんだとか取り留めのないことを考えながらも頭は大混乱だ。……ああダメだ、そろそろ意識飛びそう。

「廉造くんびっくりしたー?」

悪戯が成功した子供のような顔で、こちらもいつの間にか着替えたのか水着姿の彼女が言った。

「そりゃ…寝て起きたら海やもんなあ……びっくりしますわ……」
「因みに廉造くんが車で爆睡してたのは金兄と私で朝食にちょっと細工したからだよ」
「……」

通りで妙に眠いと思った。と言うか仮にも坊さん……ああもう、良いや。知らへん。俺はなんも知らん。

「それとねー、今回の海行き、最初に提案してくれたのも金兄なんだよー」
「……は?」
「私夏休み中しかいないし、廉造くんも聖十字学園?だっけ?とりあえず遠く行っちゃうんでしょ?」
「まあ……そうやけど……」
「んじゃあばーんと思い出作っちゃおうって話になってぱぱーって」
「リオさん俺にも解るよう話してくれへん?」
「ぱぱーって」
「……」

ぱぱー、とは。

「そない言うても俺なんも持ってきてへんのやけど……」
「柔兄達が持ってきてくれたよ」
「……一応聞きますけど自前に言ってくれへんかった理由は…」
「面白そうだから」
「……はあ」

……まあ、ええか。来たからには精一杯、楽しまな損や。

「廉造くん、早くこっち来なよー」

「いま行きますわー」

へらりと笑って、リオの側へと歩み寄る。途中そこかしこに見えるナイスバディな水着のお姉さんの姿に目を奪われ立ち止まりかけるも、その度名を呼ばれどうにかたどり着く。

水着姿のリオさんもかわいええなーなんて思いながら、珍しく自らの兄金造へと心の中で賞賛を送った。


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