子犬になった人間



運が悪かった、ただそれだけなのだろう。

学校が終わり、夏休みに入ったテンションのままに友人達と計画を立てて遊びに行った海で私は、急な高波に飲まれそのまま帰らぬ人となった。きっと死体は悲惨なんだろうなあ。溺死はなんか凄いって誰かが言ってたし。そうなら死体は見付かって欲しくないな。そんな惨たらしいもの、例えそこに私がいなくたって誰にも見られたくない。


そんな感じで死んだ私は、何故か前世の記憶を持ったまま、犬として生まれ変わってしまった。しかもオスだ。
元人間の女だった私からすると少々……いやかなりきついものがある。最初こそ半狂乱で叫び回りたい衝動に駈られていたものだが、意外にも私の適応能力は高かったらしく今では犬としての生活にも慣れ、最近では犬の知り合いまでできた。まだ心の中では“私”と言ってしまうけれど、“おれ”と言う一人称も大分様になってきたのではないかと自分では思っている。人間やればできるものだ。今犬だけど。

そんな犬生活にも慣れ親しんできたある日、とある新事実が発覚した。なんと、私は忍犬なるものらしい。忍犬とは読んで字の如く、忍の犬。
私はまだ幼すぎるため主人の元にはいけないが、近いうちに主人の元へ行き、共に学び、従い、仕えるものらしい。あれ、なんだか凄く聞き覚えがあるぞと気付いたのは数ヶ月前。どうやら私はあのナルトの世界に生まれ、あろうことか赤丸ポジションとなっているみたいだ。……なんとなく忍とかそう言う単語が聞こえて、少なくとも現代じゃないって事は気付いてたけどまさかナルトの世界だったなんて…!

なんやかんやで適応能力の高いらしい私はさほど動揺したりはせず(喜びのあまり走り回ったりはした)、それなりに子犬ライフを楽しんで過ごして来た。
そして今日、遂にキバに対面する日がやって来たのだ。今朝から楽しみで仕方ない。

漫画を読んでいた時はてっきりキバと赤丸は生まれた時から一緒なものだと思っていたけれど、実際はある程度大きくなってから(と言ってもまだまだ小さい)犬塚家で暮らすと言うものだった。よくよく考えて見れば生まれてすぐってさすがに無理があるよね。

「俺はキバって言うんだ。よろしくな、リオ!!」
「アン!」


こうして“私”の大好きな漫画の大好きな人の相棒として、“おれ”は生まれた。
大好きなキバの為、これから頑張っていこうと思います。


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