小説2 | ナノ


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愛するメアリ。

 今まで連絡を取らなかったのは、私の愛が足りないからではない。

 住所が分からなかったのだ。

 心当たりに片っ端から送ったが、戻ってきたふくろうをなだめすかして再び送り出すことを11回は繰り返した。
 この手紙が12回目だ。これが最後になるよう願っている。

 しかし、君も君ではないか?
 会えなくなってかなり経つのに一通も手紙をくれないのは、愛し合う仲として少し酷くは――

 ――いや、このくらいにしておこう。
 まさか私が君の愛を疑う日が来ようとは!


 私が例の――あまり単語をはっきりと出したくはない――暗い湿った所から出るころには、君は既にいなかった。
 どういう手段を使ったのかは知らない。
 きっと素晴らしく賢い方法か恐ろしく奇妙奇天烈な手段に違いないが、どちらにせよ私に思いつかない点は同じだ。

 何故か私を一緒に連れていってくれなかったことは、この際横に置いておこう。


 ああメアリ、君は今どうしている?
 どこにいるんだ?
 何より、無事だろうか?

 心配で、居ても立ってもいられない。
 この不安定な情勢だ。信じられる者など数少なく、逆に裏切り者は山ほどいる。
 君はそんな奴らに唆されてはいないだろうか――いや唆されても無事であることは9割方確実だが、それでも問わずにはいられない。

 なぜかって?
 言うまでもない。愛ゆえにだ、メアリ。

 離れていると、私の君への思いがいつもより強くなっているような気がしてならない。
 愛のあまりの重さに、今にも押し潰されそうだ。
 だから少しでいい、君も私への愛を示してほしい。そうすればこの不安も軽くなってくれることだろう。



 退屈のあまり『あの方』とチェスをして、ハンデのことでくだらない喧嘩をして飛び出したとか

 そのとき世にも幼稚な悪口合戦が繰り広げられて両者(周囲もだ)半泣きになったとか

 その勢いであっさり騎士団にくら替えしたとか

 今は本部に入り浸り『え、居たの?気付かなかった』と言われるほどに馴染んでいるとか



――そういう噂に惑わされることもなくなるだろう。


 というか噂だと言ってくれ。頼む。
 私の心をいろんな意味で乱さないでほしい。
 それに君を敵に回すかと思うと、恐ろしすぎて引き裂かれる悲しみで胃に穴が空きそうだ。


 そういえば、最近ナルシッサが、誰かと手紙をよくやり取りしているようだ。
 それはいつも不死鳥の羽のマークが入った便箋に書かれているのだが、どこか筆跡に見覚えがある。

 まさかとは思うのだが、君は彼女には手紙を寄越し、一方私には――


 ――この辺りでペンを置こう。

 女々しい態度は君の嫌うところだし、たぶん  きっと
 絶 対 に
 この考えは誤りに違いないのだから。


 こちらの不安も、君から手紙が来さえすれば、否定できると信じている。

 それに万が一そうであっても私は気にしないよ、メアリ。
 愛の強さが手紙の数で測れるなんて…手紙が多い方が愛されているなんて、馬鹿げた考えじゃないか。
 そうだろう?


 君からのふくろうを、首を長くして待っているよ。
 返事はできれば直筆が嬉しい。
 はっきりと鑑定結果私に対する愛が分かるからね。


 愛を込めて
 ルシウス
 

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End. 

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