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▼ Side:TREAT

※いつもと立場が真逆の変人教授につきご注意ください

 * * *



 就寝時刻も迫ってきた時刻だったが、特に思惑があるわけではなく、彼女は指定された通りに来ただけである。
 スネイプは待ちわびた思いをこれでもかと態度に表してレイを出迎えた。
普段ならば絶対に聞けないような、心からの甘い声で呼びかける。

「君の好きなものはすべて用意した。どれでも食べていいのだぞ」
「…要りません」
「遠慮することはない、なにしろ今日はハロウィンだ。ああ君の国にはこのイベントはなかったな。知っているかね?」
「ええまあ知ってますが…」

 非常にイイ笑顔で細やかな気配りをみせる教師を横目に、彼女は目の前のテーブルを眺めた。
 元は研究用の机に白いクロスが掛けられ、大きなバスケットの中には、確かに自分の好きなお菓子ばかりが山のように詰まっている。
 おまけにその脇には、温かな湯気が立ちのぼる紅茶つき。
 多分ダージリンだ。自分の好みに合わせたのであれば。

「ここで食えというのは、ハロウィン流ではないんじゃ」
「“Treat(もてなす)”だ、全く問題ない」
「そもそもハロウィンやるために来た覚えはありません。こんな時間に呼び出された用件ってそれですか?」
「そうかわかった。悪戯されるのを待ち望んでいたのだな?」
「聞けよコウモリ男」

 ついに彼女は敬語をやめた。

「質問に質問で返すな。あと、わざわざハロウィンしなくても万年ハロウィンみたいな格好してるのはあんただ、このセクハラ大コウモリ。っつうかそれ以前に立場が逆だろう!逆!」
「逆?」

 ふと真顔になるスネイプ。
 しばらくしてぽつりと、


「…なんと倒錯的な」

 彼は耐え切れなくなったのか、頭を抱えて撃沈した。

「…おい。あんた今何を考えた」
「いや、我輩はそれはそれで構わんが」
「構え。そして逆でそれってことは何をするつもりだ」
「聞きたいかね?」
「いや言うなむしろ言うな絶対言うな!あー!もう!帰る!」
「だから食べてから行きなさい。話を聞かない子だ」
「お前だ!それはお前だ!」
「まあそんなところも可愛いのだがな。安心しろ。薬など入れていない」
「わざわざ言うことによって逆にあやしいんですけどぉー!?」


 彼女がこの執拗な攻撃から逃げ切れたかはご想像にお任せするが。
 もし逃げ切れたとして、就寝時間に間に合わなかった理由をどんなに説明しても、監督生はじめ寮のみんなに信じてもらえないのは確かだった。

 孤独な狼少女に、幸あれ。




End. 

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