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▼ 5.感謝される

 


「駄目だ。もう一回引こう」
「これはさすがに無理でしょ」
「失礼ねできるわよ。しかも活発変人キャラのままでよ、『教授にとってはなぜかヒロインは天使!』みたいなご都合主義設定なんて卑怯な手は使わないわ」
「…レイ、君時々意味わかんないこと言うよね」

「策はあります。まず、スリザリンの制服をかっぱらってくる。校長室に行き、組み分け帽子に脅迫をかける。寮変えないと燃やすわよとかなんとか」
「…鬼みたいなことしてどうするの」
「狡猾とお呼び。身も心もスリザリンになるのよ、そして日々赤い奴ら…つまり君達をいびりまくりいじめ倒せばいつかは!」
「長期戦だな」
「だって誰も一日でやれなんて言ってないでしょ?」
「はい、却下。たかが罰ゲームで、我らの姫が嫌われるなんて耐えられないね」
「…というか正直、君にいじめられるのがとても怖い」
「あんだってぇ!?」
「とにかく他のにしよう。ほら、クジ引いて」




 ところがその翌日。



「せ、先生、そんな所で何を」
「お前こそ授業中になぜ廊下をうろついている」
「私は保健室からの帰りで…とか言ってる場合じゃないっすよ!今助けますから!」

 スネイプは階段の最下段につかまり宙づりになっていた。階段が気まぐれに動いた瞬間、バランスでもくずしたのだろう。
その状況を、日本人なら誰もがこう言う。


 ファイトォ―、いっぱぁー―つッ!!


 実際、引き上げるときにレイは叫んだ。
スネイプには気合い入れですと説明した。


「フェリックス・フェリシスという薬を知っているかね」
「ああ、あの万能ラッキー薬」
「表現が稚拙極まりないがまあいい。我輩は、それの反作用を持つ薬の精製に成功したのだ」
「万能アンラッキー薬…飲んだんですか」
「中和のために、フェリックス・フェリシスを取りに行かねばならん。なんとしても、授業が終わる前にだ」

 表情から察するに、彼はきっと“浦島太郎の亀”状態を予想しているに違いなかった。
 …確かに屈辱だ。まあ皆もそこまではやらないと思うけれど。

「わかりました、お手伝いしましょう」
「お前はさっさと戻れ。必要ない」
「でもそのままだと」

 ずぼっ。

 一段踏み出した途端に見えない落とし穴に突っ込んで、スネイプは慌てて足を引っ込めた。

「…ね?」
「うるさい!偶然だ!!」
「いや、その偶然に作用するのがその薬なんでは」

 恥ずかしさを隠すようにずんずん登っていくスネイプにレイはついていく。

「グリフィンドールが我輩を助けるだと?いったい何をたくらんでいるのかね…」
「危ない!!」

 足がずるり、と滑った。
 とっさに腕をつかみ、自分の方にバランスを崩した体を引き寄せる。

 抱き留める形になった彼女は、思った。

 王子さまとヒロインみたいだ。
 ただし、役割が逆の。


「ついていきますから。いいですね」

 レイは凛々しく提案する。気分は宝塚男役である。
 あまりの出来事にショックが大き過ぎたのか、スネイプは普段なら有り得ないような返事をした。






「…………すまない」






 …思わぬタイミングで、罰ゲームは達成された。




End.
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