▼ 引いてしまいました
「ええええええええ―――――っ!!」
その叫びは、談話室どころか廊下にまで響き渡り、肖像画の中の幾人かが『太った婦人』のところまでわざわざ文句を言いにきたほどだった。
叫び声の主であるレイはと言えば、ある棒を手に、談話室の中心で立ち尽くしていた。
杖ぐらいの大きさの棒の先には、文字が書いてある。
『セブルス・スネイプ』
レイは何度も何度も見直したが、文字列が変わることはない。
ズル防止のため、二度と消せないインクで書くように言ったのはレイ本人なのだから、これは当然だった。
レイは抗議の意を、低くうめくことで表現した。
「…『すぐに実行できるように、グリフィンドール生限定にしよう』って言ってたじゃん…」
「ほんとにな。書いたの誰だろ」
「この中の一人なのは確かだけど」
そういってロンは“この中”を見渡す。
ざっと20人はいた。
槍玉に上げられることが分かっていて名乗り出るような者はもちろんいない。
「いつの間にこんなに?」
「自由参加にしたら増えてさ。みんな意外と好きなんだな、こういうの」
イキイキした顔で、ジョージは用済みの棒クジを回収しながら言った。
双子が提案したゲームは、こうだ。
百味ビーンズで1番マズい味を引き当てた人が、勝ち。
逆に、1番美味い味なら罰ゲーム。
ただ、罰ゲームが相当エグい。
「レイが前に『王様ゲーム』って教えてくれただろ。それの応用だよ」
「“誰か”に“何か”することは決まってる。でも、それを決めるのは今からだ」
「なぜって、先に参加者が好き放題書いたクジで決めるからさ!!」
…で、レイは見事に、超レアな『最高級マンゴー・タイヨウノタマゴ』味を引き当て。
よりにもよって、あるはずのなかった『泣く子も黙るスリザリンの陰険教師』をいたずら対象に選出してしまった。
そして今に至る。
見ているかぎり不正はまずない。
ということは、『ビーンズ当選』20分の1、かける、『スネイプ引き当て』20分の1…
400分の1の確率。
…泣きそうだ。
「さあ悲劇のお姫さま、ついに罰ゲームの決定だよ!」
フレッドが高らかに叫びながら、紙片のたくさん入った大鍋をこちらによこす。
最後の『行動』のクジだ。
相手がスネイプという時点で、既にハードルはエベレスト並に高いことが確定している。
けれどどうか、どうか今回だけはマシなのが当たりますように…!!
目をつむって、レイはくじを引いた。
おそるおそる紙を開いて確認してみる。
そこに書いてあったのは……
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