ここだけの話。

※学パロ(not3Z)


志村妙は困っていた。急に問い掛けられたその質問は自分には到底答えなど出せそうになかったからだ。いい加減に答えを出すことも出来るが、配られた目線が鋭くて思わず怯んでしまう。
ああどうして忘れ物なんかしたのかしら。今日に限って教室に置き忘れた体操着を恨んだ。
四人は彼女を見て、口々にこう言い放った。


「ふん。貴様らには悪いがここはオレだな」
「アッハハ!まっことおまんら面白いのう!ここはワシじゃ、間違いないきに!」
「おいおい何言ってんだよ、テメェらが選ばれると思ってんのか?オレだろ絶対」
「いやクソ天パ、テメェは絶対にねェ」


高杉の言葉に、隣に座っていた銀時が脛に蹴りを食らわせる。が、上手いこと避けたのだろう、机の足が叩かれたような音だけが響いた。え?なんで晋ちゃん突っ掛かってんの?自信ないから?ああチビだもんなァ、晋ちゃんが選ばれるわけないよなァ。嫌みたらしく銀時がこぼす。今度は高杉が銀時に蹴りをお見舞いしたようだが、それも机の足に当たり不発だった。
金曜日の放課後。誰かが教室に残ってるとは予想していたが、妙が出会したのはいつも仲悪くも何故か連んでいる四人だった。
タイミングが悪かったかしら、妙は四人を前にそう考える。


(今日は早く帰って九ちゃんたちとお買い物に行く予定だったのに……。)


妙はため息に近い息を吐く。そうなってしまうのは、体操着をロッカーから取りだし、教室を出ようとした時に問い掛けられた、ある質問のせいだ。
妙にとってそれは、予想外の質問だった。


(一番モテるのは誰だ、なんて私に聞かれても)


困惑しながら頬杖をつく。それでも逃げれるような雰囲気はなく、妙は困ったと立ち尽くした。
放課後に四人、何を話しているかと思えばそんな他愛もないような話で。早く帰ればいいのに、と妙は思うが、そんなことは四人には通じないようだった。昔からの馴染みだという四人。仲が悪いのに共に連む、何とも不思議な四人。
いや、仲が悪いのはおそらく間違いだとは思う。むしろそれ以上に、この人たちは。


(仲良しさんなのね、きっと、)


でなければこんなに毎日連むことは出来ない。ふふと妙は含み笑いをしながら、問題児でもある四人を見つめた。


「?志村、何笑ってんの」
「フフ、なんでも」
「貴様の顔がおかしいからだ、自重しろ銀時」
「何が自重だ、テメェの頭が自重しろ。つか アホが顔に出てんぞヅラ」
「アホじゃないヅラだ!いや、ヅラじゃない桂だ!」
「お妙ちゃんはワシが好きなんじゃろ!隠さんでも分かっとるきに!」
「……坂本さっきからうるせェ、黙れ」


ちんすけはクール気取りじゃの〜クール宅急便じゃの〜。背の高い辰馬が高杉の肩を抱いて頭をグリグリする。その状況がよほど嫌なのか、高杉は仏頂面に眉間のシワを深くして辰馬を睨んだ。見る人によっては怯んでしまうような高杉の目付きだが、三人はそんなことでは怯まない。それが分かっているからだろう、尚更面白くないというように高杉はそっぽを向いた。
妙は微笑ましく思いながらも、こんなところで時間を食っている場合ではないと思う。言い争いをしているうちに帰ってしまおうかと思ったが。
でも意外な人物に呼び止められた。


「……志村、テメェなに勝手に帰ろうとしてんだ。質問に答えてねェだろ」
「……高杉君も気になるの?」
「まあ、一応な。」


銀時と桂が言い争いをし、辰馬が通りかかった隣のクラスのおりょうちゃんに話し掛けている時。その隙に帰ろうと構えたのだが、何もしてなかった高杉に呼び止められる。正直、高杉なら見逃してくれるかと思ったのに、見当違いだったようだ。
私なんかの意見では参考にならないわよ、妙は困りながらそう話す。それでも答えなければいけないような高杉の視線に、妙は怯んだ。
それぞれ話が終わったのだろう。四人がこちらをジッと見てくる。妙は仕方ないと腹を括り、真剣に考えてみた。


「そうねえ、モテる………優しさ、があるのは桂君かしら。紳士的な振る舞いもできるし」
「さすがお妙殿はわかっておるな。お前らオレを見習え」
「はっ、今時優しいだけじゃモテねーよ、現にヅラ、お前モテてねーだろ」
「銀時、僻むな僻むな」
「ヅラお前一回黙れ」
「容姿で言えば、そうね……高杉君は抜きでてるかしら」
「………なにドヤ顔してんの晋ちゃんウザいんだけど、つか消えてほしいんだけど!」
「わざわざ耳元で叫ぶなうぜェ」
「財力も大事ね、やっぱりお金のない男は駄目だわ」
「ワシじゃな!金持ち部門なら負けんきに!」
「あとは……うーん……」


モテる、というのは酷く微妙なラインだ。例えこの要素を完璧に持ち合わせてる人がいるとしても、必ずしもモテるとは限らない。女の子に優しいとしても、性格に難があればそれは意味がないだろうし、顔なんか好き好みがある。お金なんか無くても恋は出来るし、正直。
暫し黙る妙。ねえオレは?オレにモテる要素は?という銀時の声が聞こえたが、ここはスルーすることにする。


「ごめんなさい、分からないわ。だってモテるかモテないかは私だけが決めれる事じゃないし……それに。
結局は、自分が惚れた人が一番でしょう?」


笑顔で妙が話せば、ガヤガヤ煩かった四人が急に黙る。あれ、私なにか変なこと言ったかしら?妙は首をかしげた。妙にしおらしい四人に、不思議に思いながらも、私用事があるから行くわね、と妙は話す。その時、銀時が妙の手首をバッと掴んだ。
どうしたのかしら、驚きながらも妙は振り向 く。


「坂田君?」
「テメェは、」
「?はい」
「志村は、誰がいいんだよ、一番は、誰なんだよ」
「私、?は…………」



――――


また月曜日ね、去っていった志村妙の背中を見送って五分。四人はずっと黙っていた。重々しい雰囲気。誰が作ったかなんて、まあ、考えたら分かることである。
静かな雰囲気に嫌気が差したのか、一番声のデカい男が声を出した。


「上手くいかんのう、なに、仕方ないきに!こんなもんじゃ!アッハッハ」
「………うむ、お妙殿にはオレの魅力がわかっておると期待してたんだが」
「……オレ、なにも褒められてねえよ」
「………プッ」


机に項垂れた銀時に、高杉が吹き出し笑いを溢す。くそお前だって顔だけだかんな分かってんのかよくそ高杉。脛をバチコン、銀時が蹴れば当たった高杉は脛を抑えて踞った。
喧嘩を始めようとした二人だが、まあまあ、と桂が止める。
あっけらかんとした声で笑ったのは辰馬だっ た。


「ワシらはみんなフラれたんじゃ、ほんに恥ずかしいのう!」
「………ああ、だな」
「うむ……そうだ」
「…………。」


それぞれ息を吐いて、項垂れた。
クラスの中で、誰に好かれたら嬉しいか。そんな話をしていたときだった、志村妙の名前が上がったのは。怒ると怖いが、美人であるし、何より芯がある。大それたものでもないが、憧れにも近かった。そんな女に誰が好かれるか、モテるか、そんなことを四人で競い合っていたのだが。
でも予想は、いとも簡単に外れるものである。


「あー、やべ腹減った」
「ふぁみれすでも行こう、この前エリザベスパフェというのが発売されたらしくてな」
「またよくわかんねェの食うな、ヅラ」
「ヅラじゃないエリザベスパフェだ、ちが、桂だ!」
「おまんらの分、今日はワシが奢ってやるきに!」


立ち上がった四人は、ガヤガヤ教室から出ていった。


『私、?は………そうね。

お父様を越える人かしら、今のところ、現れてはいないけれど。』


そう笑顔を張り付けた志村妙は、やはり魅力的だった。


「越える人、ねェ………」
「どうした?銀時」
「………いんや」


そんな人が現れるか、おそらく妙自身も分かっていない。理想でしかないのかもしれない。それでも。


(…………いないってハッキリ言いやがって)


越えたいと思っている人がいるというのも。
まあ、ここだけの話である。


「結果的にオレだな、財力も優しさも顔もそれなりに持っておるだろう」
「ヅラはねェよ、お前はない」
「銀時、僻むな僻むな」
「こいつ殺して良いかな良いよなそうだよな」
「おい、オレのケーキのイチゴ盗ったの誰だ」
「そこのウェイトレスさん!ワシとデートしてみらんきに!」


ここだけの話。
(そんな青春を垂れ流しながら、今日もまた。他愛もない日常)



ーーーー
ゆいちさんから素敵な誕生日プレゼント2014を頂きました!
うひょー!攘夷の仲良しっぷりと志村さんの野郎への接し方うひょー!!
今回、男女のプラス話が読みたいですという、とんでもないリクエストの仕方してしまったのですが、こんな素敵なお話を書いてくださいました……!
淡い期待を抱く男子と、まったく興味ない志村さんのやりとりが可愛くて愛しくて、し、幸せ……!
お妙さん大好きな私のために、志村さんに愛を注いでくださったゆいちさんの懐のでかさ……!涙出ます……!
本当にありがとうございます!!!
私の心のオアシス……!潤う……!

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -