グリーン×カスミ



「うん、バッチリ」


プールの水面に映る自身の姿を確認し頷く。
今日はいつもより大人っぽく着飾ってみたが、なかなか似合っていると思う。
勇気を出して正解だった。
ゆるむ頬を両手でおさえ、よしと体を伸ばした。


「じゃ、行ってくるねみんな!」


プールで遊んでいるポケモンたちに軽く手をふり、くるりとスカートの裾を翻した。


「出かけるのか?」


突然人の声が聞こえ、心臓がドキリと跳ねた。
だが、その声が誰のかわかると自然に眉根が寄る。
再び身体をプールに向けると、いつから居たのか、足を水につけバシャバシャ音をたてているグリーンがにっこりと笑っていた。
思わずこぼれるため息。


「またなの?」

「そう睨まないでほしいな。ただタイミング悪いだけだって」

「本当かしら」


いつもいつも、これからという時に現れる。
まるでジャマをしに来るかのように。


「それで、今日は何の用?」

「バトルでもどうかと」

「残念、あたしはこれからデートなの」

「デート、ねえ……」


グリーンは含み笑いを浮かべた。
知ってるくせに。
そう呟けば、グリーンはスッと目を細めた。


「君はデートよりバトルの方が似合うと思うけど?」

「何よそれ。どういう意味」


イライラする。
腕を組み、落ち着こうと指でリズムをとる。
いつもいつも、本当に何なのか。
わざと怒らせに来てるなら相当の暇人だ。


「……ま、これ以上君に嫌われると困るし、そろそろ本音言っておくかな」

「は?」

「実は欲しいものがあって」

「はぁ?あたしの可愛い子たちなら絶対あげないわよ」

「ハハッ……だからデートよりバトルが似合うって言ったんだ」


グリーンは立ち上がり、ゆっくりと近づいてくる。
思わず身構えた。
だが、スルリと隙を縫うように、気づけば頬に温もり。
手が添えられたのだと理解するより速く、唇をグリーンの指がなぞった。


「欲しいのはカスミの気持ち……なんてな」

「…………っ!?」


せっかく高いグロスを買ったのに。
いとも簡単に拭われてしまった。
いや、それよりも。
この胸の高鳴りをどうするかが一番の問題だった。



I want you!

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