銀時×妙



お互い伝え合ったわけではなかった。
好きだの愛してるだの、そんな言葉使ったこともない。
ただ何となく一緒にいるようになって、何となく手を繋いで、何となく抱きしめ合い、何となくキスをした。
恋人の関係かと聞かれたら、分からないと答えるだろう。
俺も、アイツも。
互いに確かめてはいないのだ。
だが、気持ちは同じだろう。
俺はともかく、アイツは好きでもない男と軽はずみな事をする女ではない。
いや、俺もしないけど!
まあ……つまりは……


「お待たせいたしました。チョコレートパフェでございます」


そこまでの関係にはなっているという事実。
そこまでは、だ。
俺は大人だから、アイツの気持ちやら何やらが固まるまでいつまでも待つよ。
だが、大人だからこそ我慢できない事もある。
いい大人が、キス止まりって。
しかし、下手に手は出せない。
アイツの性格からして、この先を進むのはかなり慎重でなければならないだろう。
死にたくないし!


「銀さん?チョコレートパフェ食べないんですか?」


だがしかし、体は正直でちょっとした仕草に反応することだってある。
今だって、アイツの声が聞こえた気がして反応しかけたとかどれだけ欲求不満?
そのたびに、手が出せないことと向き合わなければならないのだ。
悶々とするのも当然。


「銀さんってば。何か考え込んでるようですけど、どうかしたんですか?」


あーダメだ。
メガネの声まで聞こえてきた。
お前はお呼びじゃねーんだよ!


「銀ちゃんが食べないなら、私が食べるアル!」

「え……?って、あぁー!俺のチョコレートパフェ!何勝手に食ってんだ神楽ァァァ!!あ?神楽!?」


隣で俺のチョコレートパフェにがっついている神楽に驚いた。
何で隣に座ってんだコイツ!
とか思ったら、向かいにお妙と新八もいるし!
お妙のあれこれ妄想してたせいで、ひどく冷や汗をかいた。


「銀さん大丈夫ですか?今日ずっと上の空ですけど」

「え……?つか、何でお前らいんの?」

「はぁ?何言ってんスか。今日はみんなで買い物に出かけてたじゃないですか。それでここのファミレスで休憩しようって……。アンタちゃっかりチョコレートパフェ頼んでたくせに……」

「そう……だっけ?」

「ついにボケたアルか?」


クスリ、お妙が笑ったのが視界に入った。
誰のせいだと……。
俺はもう一度チョコレートパフェを注文し、お妙を見つめた。
視線に気づいたお妙は、頬をほんのり赤らめ目をそらす。
触れたいと思った。
新八と神楽がいなければ、確実に手を伸ばしていただろう。
コイツらとの買い物を無意識にしてしまうほど、お妙のことばかり考えていたとは自分にビックリだ。
そんなにまで想っているのに、それを伝えたことはない。
彼女は聡いため、言葉がなくとも理解する。
もしかしたら、待っているのはお妙の方か。
理解はしても、言葉を欲しがるのが女だ。
きちんと気持ちを伝えれば、あるいは。


「チョコレートパフェお待たせいたしました」


そうだ。
キスまではしてしまったが、言葉が必要なのは確か。
今更でも伝えねばならない言葉がある。
好きだと、愛しているのだと。
下心もあるが、それは男だから仕方ない!


「このあとは夕飯のおかず買って帰ろうか」

「お菓子も買ってもいいアルか?」

「うーん……今日は色々出費が……まあ、いいか。でもひとつだけだよ、神楽ちゃん。あ、姉上は何がいいですか?」


そうだよ、お妙もそろそろ大人の階段のぼっても……なんて思ってるかもしれない!


「銀さんは何か欲しいものありますか?」

「あぁ……俺の欲しいものはお妙…………」


一瞬にして凍りついた。
そろりと新八を見れば、地味なダメガネに相応しくない顔をしている。


「オイ……てめー……今何つった……?」

「銀ちゃん、アネゴが欲しかったアルか?」

「ち、違うよ!?何バカなこと言ってんだよ!俺は、お妙の前にあるチョコレートパフェが欲しいって言ったんだよ!!」


何とか誤魔化そうと、勢いよくチョコレートパフェを口に放り込んだ。


「あ」

「え……?ゴフゥァ!!」

「それ、アネゴのたまごやき……」


何でテーブルの上に出してんの!?
思いっきり口に放ったため、ダメージもデカい。
意識が薄れる中見たお妙は、恥ずかしげにうつむいていた。
これは……今夜にでも悩みが解決するかも?
……生きていれば。



I want you!

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