ルドガー×ミラ



一番美味しいと、言ってくれたら。
そのため日々努力をしているのだけれど。
どうしても勝てないのはなぜなのか。


「……ミラ?」

「何よ」

「刺すような視線が痛いんだけど……」

「あら、視線で人を刺せたら楽しいかもしれないわね」

「……何か怒ってる?」

「怒ってないわよ別に」


ルドガーのバカ。
ぽつりと言えば、ルドガーは困ったように笑ってまた作業に戻る。
丁寧に丁寧にかき混ぜられる、エルの大好物のスープ。
どんなに頑張っても、ルドガーのスープには勝てない。
エルの一番にはなれない。
パパには勝てなくても、せめてルドガーには勝ちたい。


「特別なことはしてないよ、ミラ」

「ウソ。だったら、どうして私があなたに負けるのよ」

「うーん……こっち来て見てみる?」


ちょいちょいと、ルドガーは自分の横を指差した。
少し迷ったけど、隣に立って鍋を覗く。
澄んだキレイな色をしたスープ。
野菜の皮や、シンクに置かれた調味料を見る限り、確かに特別な秘密があるようには思えない。
ちらりとルドガーの顔を見た。
穏やかで優しい顔。
いつもは料理をしているルドガーの背中ばかり見てたことに気付いた。
こんな顔で料理をしていたんだ。


「ミラ?何?」

「な、何でもないわよ」


見とれてた、なんて口が裂けても言えない。


「エルを思って作ってる。ただ、それだけ」

「愛情が一番のスパイスって言いたいわけ?」

「アハハ、実際そうだろ?」


悔しいけれど、否定はできない。
でも、私だってエルが大好きって気持ちを込めてるのに。
それもルドガーに負けてるということだろうか。


「ミラも入れる?エルへの愛情」

「…………」


はい、とお玉を渡される。
受け取って、ゆっくりと鍋をかき混ぜた。
ルドガーの愛情に、私の愛情を混ぜてもいいのだろうか。
顔に熱を感じた。


「……すき……だいすき……」


愛情を言葉にして、鍋をかき混ぜる。
睨むようにルドガーを見上げれば、ルドガーはにっこりと笑った。



I love you!

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