同じもの


※妙誕



「こんな夜中に呼び出すから、何かと思えば……」

「ふふっ」


紙袋いっぱいに入ったプレゼントの数々。
妙は眠そうな眼の銀時に、その紙袋を押しつけた。
面倒そうに受けとった銀時は、眠い重いと文句を口にする。
聞こえないフリをして、自分の荷物を持った妙は上機嫌に歩き出した。


「すげぇな。これ全部お前にか」

「ええ。当日である明日はお休みをいただきましたから」

「ふーん。それでみんな今日渡しに来たのか」


フフフ、と妙は笑う。
誰かに祝ってもらうというのは、やはり嬉しい。
特別扱いなんて、そうそうされないのだから。


「そっちの荷物は持たなくていいんですかお妙さん」


銀時の気遣いに、くるりと振り返る。
彼が指を差すのは、妙が右手に持つ紙袋。
やはり同じように、溢れるくらいパンパンにプレゼントが詰められていた。
妙は立ち止まり、紙袋を持ち上げる。


「こっちは同僚の女の子からです。だから私が持つわ」

「そうなの? やけに安っぽい包みとか見えるけど……キャバ嬢のくせに安物をプレゼントか」

「ま、失礼ね。金額で価値なんか決めませんよ。それに……」


妙は再び歩き出した。
その横を銀時は並び、言葉の続きを待つ。
冷たい風が吹いて、妙は少しだけ目を細めた。


「店の子に何が欲しいか聞かれて、実用的なものが欲しいって答えたの」

「実用的?」

「お客さんはキャバ嬢の志村妙しか知らないでしょう?だからアクセサリーとかバッグとか、とにかく高価なものばかりくれるんです」

「あぁ……ブランド品ばっかみたいだな」

「嬉しいけれど、使い勝手に困るのよね……。だから私らしい物を店の子にはお願いしたんです」


普段身につけないような高価なものよりも。
安くても使えるものの方がいい。
店の子も最初は戸惑ったような顔をしたものの、すぐに理解してくれた。
らしい、と笑ってくれた。


「なぁ……俺からは何が欲しい?」

「銀さんから?」

「金はねぇから、立派なもんはやれねぇけど……」


銀時は目線を泳がせ、くしゃりと髪を掻く。
そんな銀時の横顔を見つめ、妙は小さく笑った。
空いている手を絡めすり寄る。


「銀さんと同じものがいいです」

「俺と……?」

「はい」


頷けば、銀時は照れくさそうにそうかと呟いた。
「お妙がいてくれればそれでいい」
銀時は誕生日プレゼントに妙自身を望んだ。
だからといって、何もあげないのは気が引ける。
だから妙は砂糖たっぷりの卵焼きを作りプレゼントした。
なぜかそのあと倒れてしまったけれど。
そばに居てくれれば。
妙はその言葉を口にし、銀時を見上げる。


「あのさァ……」

「はい」

「俺の誕生日プレゼント、お妙が居てくれればっつったけど……それってつまりお妙が欲しいって意味なわけだよ」

「はぁ……」

「分かる?お妙が、欲しいんだよ」

「…………」


沈黙。
ニッコリと綺麗に笑う妙と、拳を握り期待するような表情の銀時。
だがすぐに、銀時は凍りつく。
妙の美しい笑みに般若が見えた。


「で?」

「い、いや〜……俺と同じのが欲しいんだよね……?だったらお前も俺が欲しぶべっ!!」

「今思いついたろ」

「だってお前……!俺の誕生日の時はお前の卵焼きのせいで気を失ってたんだぞ!」

「おいしさのあまり?」

「んなわけあるかァァァ!」


銀時の顔面に妙の拳がめり込んだ。
妙はフン、と鼻を鳴らし先を歩く。
一歩、二歩と進み立ち止まった。


「銀さん」

「あ?」

「お利口さんにしてたら……いいですよ?」

「お利口さんって…………え……ええっ!?」


マジでかァァァ!
銀時の叫び声が夜空に響く。


「さ、早く帰りましょ。新ちゃんと神楽ちゃんに会いたいわ」

「いやいや、ガキ共は寝てるからね。だから、どうせならこれから……」

「新ちゃんと神楽ちゃんがいるからダメです」

「え、明日だって新八も神楽もいんじゃん」

「そうですね」

「そうですね!?」


それって結局……!
銀時の言葉を無視し、妙はスタスタと歩いていく。
その頬はほんのりと赤い。
精一杯の頑張りは、きちんと彼に通じただろうか。
ちょっと待てと追ってくる銀時から逃げるように、妙は足を速めた。



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お妙さんお誕生日おめでとう!!ずっと大好きです!
お付き合いくださり、ありがとうございました!

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