女心に男心


笑った顔が好き。
彼女のどこが好きか、という問いに、そう答える彼氏は多い。
当たり前、一般的、模範?
それは、ごく普通のことなのだ。


「……で?」


だから何だ、と。彼は言う。


「土方さんって女心がわからない人ね」

「んなもん、わかるわけねぇだろ。理解する必要もないしな」

「まあ、何て人。私が浮気してもいいっていうの?」

「それは困る」

「なぜ?」

「嫉妬するからに決まってんだろ」


女に縁がない。
そう言っているが、そんなことはないだろう。
顔だけなら言い寄る女は沢山いる。
だからきっと、然り気無くかわすことも、歯が浮く台詞も難無く言えてしまうはずだ。
ただ、性格が不器用なだけで。


「土方さんにとって、私はその辺の女と何も変わらないのね」

「……お前も男心がわからないやつだな」

「だってそうでしょう?嫉妬するなんて、土方さんらしくないもの」

「俺はお前より長生きしてんだよ」


だから何だ、と。今度は私が言う。
なんて甘くない雰囲気だろう。
嫉妬してくれるのは嬉しいことのはずなのに。
言葉に真意が見えないからだなんて。可愛くないないわね、私。


「ねぇ、土方さん。土方さんは私のこと、ちゃんと好きかしら?」

「当然だろ?好きでもない女と一緒にいるほど暇じゃないんでな」

「そう……。ふふ、嬉しいわ」


彼の気持ちはわかってはいる。愛してくれているのはわかってはいるのだ。
でも、好き、って愛を囁いてほしい時もあるし、こういうところが好きとか褒めてほしかったりもするのは乙女心というか。


「笑顔が素敵、なんて言われ慣れてるけど、土方さんにも言ってほしいわ」

「そんなありきたりなのは嫌なんじゃなかったのか」

「ええ。嫌ですよ。だって当たり前だもの。でも言ってくれたら嬉しいのもまた事実よ」

「面倒なやつ」

「女なんて面倒なものよ」


そう言えば、彼は呆れたようにため息を吐いた。
何か文句でも言われるかしら?と思っていたら、ふいに抱きしめられた。
煙草のにおいがぐっと濃くなる。


「さっき嫉妬っつったら疑ったじゃねぇか。何言ったってひねくれて受け取るんだろ」

「ひねくれて、なんて失礼ね。土方さんがウソくさいのよ」

「悪いな、そういう言い方しかできねぇんだよ」


好きだ。
耳元で囁かれて、不覚にもぞくりとしてしまった。
結局、どんなに強がってみても私は彼の言葉に胸をときめかせてしまうのだ。


「私の、どこが好き……?」

「俺が好きで好きで仕方がないとこ……なんてどうだ?」

「……バカ……」


そんな私の気持ちも見透かされているのだから、強がりは無意味。


「私は土方さんの全てが好きよ」


そう言って、唇を塞いだ。
さて、離れた時の貴方の反応は?



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土妙!
甘くするつもりが……これは甘いに入るのかしら?
読んでくださった方、ありがとうございました!

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