言い訳は起きたあと
「あ〜……ねむっ……」
「フン、情けない奴だ。このくらいで……ふわ……」
「てめーも眠そうにしてんじゃねーか!」
声にいつもの張りがない。
男鹿はそもそもの原因であるベル坊を睨み付けたが、肝心の本人はヒルダの腕の中で気持ちよさそうに寝息をたてている。
舌打ちをしながら窓の外に目を向ければ、半分ほど顔を出した朝日をバックに鳥の群れが飛んでいた。
「オイ、ベル坊の夜泣きがひどいせいで朝になっちまったぞ……」
「仕方なかろう。坊っちゃまはまだ赤子なのだ。夜泣きくらい当然だ」
「電撃くらうオレの身にもなってみろよコラ」
貴様のことなど知ったことか。
こくりこくりと頭を揺らしながら言うヒルダに言い返す言葉は、眠気のせいで見つからない。
「ベル坊も寝たことだし、オレも寝るか……。明日……っつーか今日か。学校が休みでよかったぜ」
大きな欠伸をし、男鹿は倒れるようにベッドに身体を預けた。
「…………オイ」
ベル坊をベッドに乗せたところで力尽きたのか、ヒルダがシーツに顔を埋めていた。
ベッドの端にいるせいで、今にもベル坊が落ちてしまいそうだ。
きちんと乗せようにも、ヒルダが腕で囲っているため抱き上げることもできない。
「オイ、ヒルダ」
軽く揺すってみたが、起きる気配はない。
ぴくり、男鹿のこめかみが波うつ。
「ちっ……」
怒るのも面倒だ。
男鹿はベル坊と一緒にヒルダもベッドの上に引き上げた。
少々乱暴だったにもかかわらず、やはり目を覚ますことはない。
それだけ疲れていたのだろう。
電撃は全て避けていたくせに。
「せま……」
ベル坊のスペースくらいはあるにしても、さすがにヒルダもとなると窮屈になる。
一人ようなのだから、当然のことなのだが。
「しかたねーな……」
間にいるベル坊を潰さないようにヒルダの腰を引き寄せた。
抱き合って眠っているように見えるが、たいして気にならない。
とにかく眠いのだ。
「おやすみ」
言い訳は起きたあと考えることにしよう。
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