その差は

「ひっさしぶり〜!」

数年ぶりに、カスミと再会した。
サトシは旅をしているし、カスミはジムリーダーとして忙しい日々。
会うことなど、ほとんどない。
それでも繋がりが切れたわけではない。
だから今こうして、笑顔で再会したのだ。

「元気だった?」
「ああ、元気だぜ。カスミも元気そうだな」
「ふふふ、サトシはあまり変わらないわね。背が伸びたくらいかしら?」
「やっとカスミを見下ろせるくらいにな」

何か悔しいなー。
オレは嬉しいけど。
変わらない、いつものやりとり。
カスミのそばは、安心する。

「お腹すいたでしょ?ママさんがご飯用意してくれてるから、食べましょう。あたしもお腹ぺこぺこなのよ。あ、ママさんは今ちょっと出かけてるけど、すぐ戻るから」
「そうなの?今日帰ってくるって言っておいたのに」
「ママさんだって暇じゃないんだから。ピカチュウもお腹すいたわよね?ピカチュウの大好物も用意してるからね〜」
「ピカチュ!」

カスミの腕に抱かれてたピカチュウが嬉しそうに鳴いた。
変わらないなぁ。
サトシは呟くと、カスミの跡を追った。

「おお……!オレの好きなもんばっか!」
「あたしも手伝ったのよ。ちゃんと味わって食べてね」
「いただきまーす!」
「ピーカー!」

サトシとピカチュウは手を合わせると、口を大きく開け大好物を頬張った。
懐かしい、大好きな味。
そんなに急いで食べなくてもたくさんあるわよ、とカスミは笑い、サトシの向かいに座った。
手を合わせ、いただきます。
箸を持ち、食べ物を挟み、口に含め、咀嚼。
サトシはボケッとその様子を眺めていた。
ひとつひとつの動きから、目が離せなかったのだ。
カスミと目が合う。
ドキン、心臓が音を立てる。

「何?」
「え、あ、いや……えっと、カスミ髪伸びたなーって」
「髪?ああ、そうね……あの頃よりは伸びたわね」

肩より少し下くらいの長さ。
昔のように結ってはいない。
だからだろうか。
カスミが大人っぽくなったように見える。
実際目を奪われた。カスミの動きに。
色気、というべきか。
ただ物を食べてるだけじゃん。
サトシはドキドキする胸を押さえた。

「ねえ、サトシ」
「え!?」
「何驚いてんの?」
「い、いや、何も」
「そう?あのね、あとで……明日でいいわ。ちょっと買い物付き合ってほしいの」
「え、何で明日?」
「今日は帰ってきたばかりでしょ。博士やケンジ、ポケモンたちに挨拶しなきゃ」

ああ……とサトシは頷いた。
その後付き合ってもいいのだけど、ポケモンたちと長く過ごしたいだろうというカスミの気遣いに口元をゆるめた。
カスミもそんなにゆっくりしてる暇はないだろうに。
付き合ってほしいという事は、荷物が多いか、一人では入りづらい店か。

「何買いにいくんだ?」
「うん。水着をね」
「……みず、ぎ……?」
「最近はジム戦も水着でやってるのよ。服だと濡れていちいち着替えなきゃいけないもの。最初から水着なら問題ないじゃない?」
「水、着……」
「毎日使うものだし、もっとたくさん用意しておかなきゃっていうのと……その……」
「え?なに……?」
「さ、サイズが……成長したおかげでちょっと、ね……」
「…………」

それを男のオレに言うのか。
その前に。水着でジム戦って何だ。絶対それ目当てで来てるヤツがいるだろ。
ムッと自分でわかるくらい眉間に力が入る。
ポンとピカチュウに肩を叩かれた。

「荷物持ち、お願いしていい?」
「……わかった」
「ほんと?ありがとー」

カスミはパッと顔を輝かせた。
こっちは大人っぽくなったカスミにドキドキだというのに。
そのカスミはまるで意識していない。
面白くない。
水着でジム戦も、カスミの態度も。
しかし。

「オレって単純……!」

カスミの水着姿が見たい。
その気持ちには勝てなかった。
今さら気づいたの?というカスミの声を聞きながら、サトシはテーブルに突っ伏した。


end


色気が出てきたカスミちゃんにドキドキするサートシ君が書きたかったんだけど。何かどっか間違えた。
多分、たっぷり堪能したと思う(笑)
お粗末様でした!


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