遅めの朝食

今日は天気が穏やかで、風もなく過ごしやすい。
ぐっと背伸びしたシゲルは、ゆっくりと深呼吸する。

「……さて……と、朝食にしようかな」

どこかのんびりできそうな所を探そう。
シゲルはゆっくりとした歩調で街並みを歩いた。
すでに人々が活動している時間帯。活気を感じていると、少女の声が道行く人の足を止めているのが見えた。
だが、すぐに去ってしまう人々。その手に持っているのは。

「チラシ……?」

ビラ配りか、と何となく視線を声のする方に定めて進む。 

「ん……?」

見覚えがある。シゲルは足を止めた。

「新装開店でーす!よろしくお願いしまーす」
「喫茶店?」
「ええ、そうで……す……!?し、シゲル!?」
「やあ」

あわあわと手を上下するのは、サトシの旅の仲間であるカスミ。
しかし彼女一人のようで、サトシもタケシも姿は見えない。

「バイトでも始めたのかい?」
「バイトというか……まあ、似たようなものだけど……」
「ん?サトシたちは?」
「さあ……街を見て回ってると思うけど……」
「へぇ」
「何よ!言いたい事あるなら言えば!?」

目をつり上げるカスミに、シゲルはくすりと笑った。

「これから食事にしようと思ってたんだ。よければ案内してもらえるかな」


****


「へえ、なるほどロケット団が」
「そうなの。困ったものよね……」

コーヒーを口に含みながら、シゲルは向かいに座るカスミに同情するように苦笑する。
カスミの話によると、街についてサトシたちと別れたあとロケット団に襲われたらしい。
その時にこの喫茶店の窓ガラスを割ってしまい、その弁償のためにビラ配りで客を集めていたようだ。
ちらりと割られたという窓を見たが、すでに新しいものがはめられていた。
視線をカスミに戻す。今は休憩をもらっているが、今度は皿洗いが待っていると憂鬱そうな顔をしている。

「窓ガラス割ったのロケット団なのに……」
「まあいいじゃないか。これも経験と思えば」
「罪押しつけられて経験も何もないわよ。というか、シゲルはずいぶん変な時間に食事するのね。早めの昼食?」
「いや、遅めの朝食だよ。徹夜明けでね。ついさっき起きたところなんだ」
「そうなの。穏やかな顔してるけど、一段落ってところかしら?」
「まあね」

シゲルは笑うと、たまごサンドを頬張った。シンプルでいて美味しい。

「僕も手伝おうか?」
「え?」
「一人より二人だろう?」
「本気で言ってくれてるの?」
「もちろん。いい息抜きになりそうだし」
「息抜きって……結構大変よ?それより街歩いてる方がよっぽどいい気分転換になるわ」
「手伝いたい、って言ったら?」

最後の一口。
シゲルはごくんと飲み下すと、カスミを見つめた。
悪いと思っているようで少し困った顔だ。
けれど、気分転換になると思ったのは本当だから。
カスミが首を縦に振るのを待った。

「……わかったわ。あたしとしては助かる事だし」
「君よりは効率よくできると思うよ」
「あんたって……それ余計な一言?それとも、あたしに気遣ってくれてわざと言ってるの?」
「おかしな事言うね。僕はいつだって真面目に本当の事言ってるんだけど」
「……まあいいわ。一応、ありがと」

ほんの少しだけ照れたように。お礼を言うカスミに影がかかった。
雲でも出てきたかと外を見れば、べったりと窓に張り付いている生物がいた。

「サートシ君じゃないか」
「何してんのよ……」

窓に張り付くサトシは不機嫌丸出し。
その理由は考えずともわかるが、カスミはわからないらしく疑問符を浮かべているようだった。
急いで店に入ってきたサトシはバンとテーブルを叩いた。

「何でシゲルがいるんだ」
「偶然だよ」
「ちょっとサトシ。何ピリピリしてんのよ。タケシは?」
「街に来て別れてから知らない。つーかカスミも何やってんだよ!シゲルなんかと!」
「なんかとは失礼だな」
「成り行きよ」

これは面倒な事になったかな?と、シゲルはコーヒーを啜りながら苦笑する。
この三人で皿洗いはさすがに割れる皿の枚数が心配だ。

「サトシたちと別れたあと大変だったんだからね!」
「そんな事知るわけないだろ!」

またケンカか。
よく飽きないなと感心してしまう。
傍らにいたピカチュウと目が合うと、しょうがないねと笑いあった。
皿洗いは二人に任せて、別の仕事をもらおう。
シゲルは飲み終えたコーヒーカップと皿を手に立ち上がった。


end


本当はサトカスシゲが書きたかったのですが、シゲ+カスにしかならなかった(笑)
ロケット団はピカチュウ狙ってきたけど、ジャリガール一人しかいなくて、アレ?でもとりあえずバトルだ窓ガラスガシャーンやったのジャリガールですって逃げようとした所カスミさんに吹っ飛ばされました。
お粗末さまでした……!

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