眠気を誘う体温

※現パロ


指を滑らせ、キュッと音を鳴らす。

「うん。いい音」

汚れもなければ、模様すらない真っ白な無地の皿。
ピカピカになった事を確認したカスミは、皿を水切りラックに立て掛けると、軽く振った手をタオルに伸ばした。
食器はすべて洗ったし、洗濯も終えた。あとは掃除だ。
カスミはよしと腕を捲ると、クルリと振り返った。

「シンジ、そこ掃除しちゃうから隣の部屋に……あら……」

カスミは目を丸くさせた。
さっきまで読書をしていたのに。

「シンジ……寝ちゃってるの……?」

そっと近づき、囁いた。
閉じられた瞼は開かず、静かな寝息だけが聞こえる。

「シンジ〜、寝るならお布団で寝た方がいいよー?」

やはり反応はない。
どうやら、本当に眠ってしまったようだ。
カスミはじっとシンジを見つめた。
ソファの肘掛けに頭を乗せ、読みかけの本が腹の上から落ちそうになっている。
シンジも眠るのね、と当たり前の事を思った。
誰しも睡眠をとるものだし、夜は一緒に寝てるのだから知ってはいるけれど。
こうして昼間に寝てしまう事が珍しく、その寝顔も不思議と新鮮に感じた。
お昼寝、というと何だか可愛い。カスミはくすっと微笑した。
さらり。シンジの前髪を撫でる。

「……これじゃ、掃除はできないわね」

起こしてしまうのはもったいない。
穏やかな寝顔を見つめていると、眠りへと誘われるように欠伸が出た。
一緒に寝ちゃおうかしら。なんて思えるほど、今日は陽気がよく心地のいい風が吹いていて、昼寝をするには最適だ。
カスミは落ちそうになっている本をそっと手に取ると、テーブルの上に置いた。
シンジの寝顔をもっと近くで見ようと、顔を寄せる。
瞬間、強い力で引っ張られた。
後頭部を押さえこまれ身動きができない。物理的にではなく、驚きと胸の高鳴りでだ。
額同士が当たってしまいそうなほど近い距離。

「…………」
「……お、おはよシンジ……起こしちゃった……?」
「……いや、別に」

穏やかな寝顔から一転、眉間に皺を寄せたいつもの顔。
だが、まだぼんやりとしているのか、眠そうな目をしていた。

「終わったのか?」
「え?あ……うん……洗い物はね。あと掃除が残ってるんだけど……シンジが寝てたから」
「起こしてくれて構わなかったがな」
「うん……何かもったいなくて……」

もう少し、見つめていたかったな。カスミは心の中で残念と笑った。

「どうする?起きる?それなら掃除しちゃうけど……」
「……いや、今日はいい」
「あら、いいの?」
「お前も眠そうだしな」

フッと微笑するシンジ。
カスミはほんのりと頬を染める。
思わずシンジの服を握ると、身体を抱きかかえられた。
くるん。仰向けのシンジにカスミが重なる。

「寝る」
「え?まっ……お、重いでしょ」
「平気だ」

シンジは何でもないように言うと、再び目を閉じた。
本当にこのまま寝るつもりなのか。
カスミの頬に赤みが増す。
そっと胸元に耳を当てると、規則正しい鼓動の音が聞こえほうと息をついた。
こっちは早鐘のようなのに……何なのかしらこの余裕……。
ちょっぴり悔しさがこみ上げるものの、幸福感に満たされるようで。自然と頬が緩んだ。

「カスミ」
「ん?」
「夕飯はどうする」
「んー……何でもいいかな。シンジが食べたいものでいいわ」
「じゃあシチューだな」

シチュー食べたいの?という問いは喉の辺りで止まった。
洗濯や掃除といった家事はカスミの仕事だが、料理は苦手なため食事の当番はシンジがやっている。
最近、シンジの料理の腕がやたら上がっているような気がしていたのだ。
どこか懐かしいような味になったと言うべきか。

「……シンジ……もしかしてタケシに会ってる……?」
「…………」

昔からお世話になっている近所のお兄さん的な存在。
よく料理もご馳走になっていたし、今でも家事を教えてくれたりする良き相談相手だ。
そのタケシが得意としていて、カスミも大好きだったシチュー。
顔に熱が集まるのを感じた。
気づくか気づかないか、というさり気なさに弱いのだ。

「あたし……シチュー食べたい……」
「……そうか」

胸板に顔を押しつけた。
好みに合わせようとしてくれている。それがとても嬉しい。
スッと、シンジの指がカスミの髪を梳いた。
優しい手つきに眠気がゆっくりとやってくる。
温かな体温を感じながら、カスミは静かに瞼を閉じた。


end


シンカス楽しい!!
捏造カップルはパロ関係やりやすいです。
そしてシンカスはだいたいカス→シン強めでカスミちゃん乙女!楽しい!!
お粗末さまでした!

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