休息

因果応報、と言うべきか。
シンジは目の前の光景に、渋い顔をした。
トレーニング中、木の上から落ちてきた野生のピチュー。と、ヒコザル。
ピチューは落ちた時の衝撃で気を失っており、その側をヒコザルがうろうろしながら泣いている。

「……ドダイトス」

ちらりと視線を移せば、ドダイトスは二匹をじっと見つめていた。
シンジはため息を吐くと、荷物の中からキズぐすりを探す。
ヒコザルを押しのけ、ピチューを抱き上げた。
シュッと一噴き。

「……ピ……チュ……?」

ピチューが目を覚ますと、ヒコザルが嬉しそうに飛び跳ねた。
シンジはピチューを降ろし立ち上がる。
行くぞ、とドダイトスに声をかけるが、ドダイトスはぴくりとも動かない。
ただじっと見つめている。

「…………」

頭に乗るピチューと手を引いてくるヒコザル。
キャッキャと楽しそうな声が響いた。
シンジは眉を寄せる。
ドダイトスを見れば、嬉しそうな顔をしていた。
何だその顔は。
睨むも、ドダイトスは優しく笑うだけ。

「別に、かわいそうだとか思ったわけじゃない」

頭に乗っているピチューを再び抱き上げた。
愛くるしい目がパチパチと瞬く。
ピチューとヒコザルを見た時、過ぎったのはピカチュウを連れたトレーナーと、その一行。
ピチューのケガは無視しても構わないくらいの程度だ。
だが、今ここで無視すれば、あの連中がギャーギャー騒いでる様子が頭から離れそうになかった。
ただ、それだけ。

「ヒコ……?」

ヒコザルが不思議そうに首を傾げる。
シンジは片膝をつくと、ヒコザルに手を伸ばした。
頭に触れ、そっと撫でる。
ヒコザルは心地よさそうに目を細めた。
こんな風に、あのヒコザルとは接することなかったな。
そんなことを思う。

「ピチュ!」

ピチューがドダイトスに跳び乗ると、続くようにヒコザルもじゃれつく。
シンジはフと息を吐き、木の幹に寄りかかるように座った。
少しくらいなら休憩してもいいだろう。
ドダイトスたちに視線を向け、ゆっくり目を閉じた。
風がふわりと撫でていく。
ピチューとヒコザルの楽しげな笑い声を聞きながら、シンジは眠りへと落ちていった。

目が覚めたシンジの目に映ったのは、自分に寄り添って眠るピチューとヒコザルと、穏やかにそれを眺めるドダイトス!


end

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