綿雪はらはら

「ぶぇっくし！！」

ブルリ、神楽の体が震えた。
鼻水をすすり、窓の外を見つめる。
はらはら、綿雪が舞っていた。

「何でこんなクソ寒いのに停電になんてなるアルか」
「本当に。特に今日は冷えるらしいからね……凍え死にそう……ハックシッ！」

ブルリ、同じく体を震わせた新八が鼻をすすった。

「っていうか、新八ズルいアル。一人で毛布くるまって」
「神楽ちゃんは厚着してるからいいけど、僕はいつもの三本ラインだから」
「厚着したって寒いものは寒いネ！私も入れるヨロシ！」
「ちょ、自分の出してきなよ」

神楽は新八の毛布を無理やり引っ張り、自分もそこに入り込んだ。
おー、ぬっくいアル。
まったく、仕方ないな……。
並んで毛布にくるまる新八と神楽は、窓の外を見つめた。
はらはら、雪が舞う。
子どもの楽しげな声が聞こえた。

「定春、早く帰ってこないかな……。もふもふしたいアル」
「そうだね……。定春に抱きつけばあったかいだろうなぁ……」

真っ白なもふもふ。
想像した二人は、そのあたたかさにへらっと笑った。
しかし、あまりの寒さにすぐ現実に引き戻される。
定春が銀時と散歩に出て、一時間はたつだろうか。
じゃんけんに負けて仕方なしに散歩に出た銀時のことだから、早く帰ってくると思っていたのに。
途中で降り出したこの雪に、定春がはしゃいでいるのかもしれない。

「雪が降るのは深夜からって言ってたのに……」
「まあ、天気予報なんてそんなもんだよ」
「寒いアルー」

定春ー、と神楽が叫ぶと、玄関の扉が開く音が聞こえた。
帰ってきた。
新八と神楽は顔を見合わせる。

「おー、さむさむ！何この家、寒い！」
「銀ちゃん！お帰りアル！」
「ご苦労様です、銀さん」

体をさすりながら部屋に入る銀時は、新八と神楽の姿を見て怪訝そうな顔をした。

「何仲良く一緒の毛布くるまってんだお前ら。仲良しか、仲良しさんなのか」
「銀ちゃん、定春は？」
「いかんぞ、年頃の男女がそんな……あ？定春？定春ならこのクソ寒い中はしゃいで泥まみれになったから、下でたまが洗ってくれてるけど」
「えー、やっと定春でもふもふできると思ったのに……銀ちゃんの役立たず！ヘックション！」
「誰が役立たずだ。お前の代わりに散歩連れてったんだぞ俺は」
「あー、もう神楽ちゃん。鼻水垂れてるよ」

新八はサッとティッシュを取ると、神楽の鼻を拭う。
ちーん、と神楽は鼻をかんだ。

「余計な心配だったな。年頃の男女っつーか、お前ら親子だったわ」
「誰がお母さんだ！」
「お母さんなんて一言も言ってねーけど」

ブルリ、銀時の体が震える。
手を擦り合わせ、飛び込むように新八と神楽の間に割って入った。

「ギャァァァ！寒いアル！冷たいアル！」
「ちょっとォォ！せっかく温まってたのに何してくれてるんですか！毛布なら押し入れにまだ入ってますよ！」
「いいだろ別に！お前らの体温であったまってるこの毛布がいい！それに、俺だけ別の毛布なんて寂しいだろーが！！」

銀時はそう言うと、新八と神楽の肩に腕を回してぐっと抱き寄せた。
銀ちゃん冷てーアル！
寒い！毛布の中が一気に氷点下！
俺はあったかいわー。
ギャーギャー喚いて数分後、三人はぼーっと窓の外を見つめた。
はらはら、雪が舞う。

「銀さん。帰ってくる頃には、雪は地面覆うくらいにはなってました？」
「おー、だいぶな。こりゃ積もるぞ」
「ほんとアルか。そしたら皆で雪合戦ネ！」
「一人でやってろ」

雪玉に石詰めて投げてやろーか、と神楽が銀時を睨んだと同時に、玄関からドタドタと足音が聞こえた。

「わん！」
「定春！」

毛布から抜け出した神楽が定春に抱きつく。
もふもふ。
洗い立ての毛が気持ち良い。
どうやら、丁寧にドライヤーで乾かしてくれたようだ。

「やっぱりあったかいな〜定春は」
「さすが定春。散歩中も抱きついてりゃよかったぜ」

もふもふもふもふ。
三人は定春の毛に埋もれようと体を動かす。

「…………背中寒い」

銀時は畳の上に落ちた毛布を拾い、また三人でくるまった。
それを囲うように定春が伏せる。

「電気使えないって不便ネ」
「そうだなー……」
「でもまあ、今はあったかいですし」
「そうだなー……」

ぴったり寄り添った三人は、やがて目を閉じた。
すやすやと聞こえる寝息。
そんな三人の頭を預かる定春が、ワンと静かに吠えた。


end


いちゃいちゃしてる万事屋が書きたくて。
毛布にくるまる三人想像したら萌え転げた……。悶絶。
お粗末さまでした！