魅惑的な苺

白く細い指がふっくらしたとした真っ赤な果実をつまみくるりと回した。
へたを取り、瑞々しい輝きを放つそれを口内に押し込む。

「……銀さん。さっきから何ですか。そんなじっと見られると食べづらいわ」
「……別に」
「働かない人にはあげませんからね」

そう言ってまたひとつ、真っ赤な果実が消えていく。
甘いと呟いているように、見るからに美味しそうないちごだった。
次々に妙に食べられていくいちごは、銀時にとっては魅力的なものではあるけれど。

「やっぱり高いいちごは甘さも違うのね……」

ぺろり、妙は指を舐める。
ガン。
鈍い音が響き、妙は不思議そうに小首を傾げた。
銀時がテーブルで顔面を打ち身悶えている。

「何やってるんです」
「……いや……」

赤くなった鼻を抑えながら、銀時は顔をあげると妙を睨むように見つめた。
いちごよりもずっと。
銀時はゆっくりと手を伸ばし妙の手を掴んだ。
妙が何かを言う前に。軽く引き寄せ唇を重ねた。
甘酸っぱい香りと味を追い求めるように舌をねじ込む。
香りが濃くなり、さらに奥深くへと潜るように進み甘さを味わった。

「痛っ……」

角度を変えようとしたその瞬間、歯を立てられ銀時は妙から離れた。
何すんだと妙を見れば、ムスッと軽く頬を膨らませ、睨みつける瞳はうっすら潤んでいる。
ごくり、思わず喉を鳴らす。
妙はムスッとしたまま口を開いた。

「いちごが食べられないからって、私で味わおうとしないでちょうだい」

ガン。
銀時は再び顔面をテーブルで強打した。
妙はこういう事に関しては鈍い。
鈍いのはわかっているが、少しも伝わっていないのは寂しいものがあった。

「いや……あのさ、お妙……」

顔をあげ妙を見る。
確かに、最初はいちご食わせろとは喚いていた。
貰い物の高級品と聞けば当然だろう。
ただ、この広い志村邸の屋根の修理をする事を約束していて、それをすっぽかしたのは銀時だ。
依頼として受け、その報酬がいちごでは割に合わないと思った。まさかそのいちごが高級品だなんて。
自業自得に苦虫を噛み潰したような顔で、美味しそうにいちごを頬張る妙を恨めしげに見ていた……のだが。
いつの間にか、美味しそうないちごではなく、美味しそうに食べる妙に目を奪われていた。
高級品よりずっとうまそうだと。
味わったのはいちごではなく妙の方なのだ。
それなのに。

「おいしかったですか、いちごは」
「うまかったけど……」
「そうでしょう?でも、あげませんからね」
「…………」

もはや、いちごそのものへの興味は薄れてしまっている。妙自身がいちご味なのだととらえているのだから。

「なあ……」
「あげませんよ」
「……別にいちごはいらねェよ」
「え?」
「いちごはいらねェ。だからキスさせて」
「やっぱりいちご目当てね」
「違うっての」

銀時はハアとため息をつくと、妙の手首をそっと握った。
その白い指から転がり落ちた真っ赤な果実は、テーブルの上で光輝いている。落ちても転がっても潰れても、きっと最高に甘くて美味なのだろう。
しかし、銀時は目もくれず妙の唇に自身のを押しつけた。
いちごでは絶対に感じる事のできない甘い痺れ。妙でなければ味わえない甘さ。
突き刺して、弄る。

「ん……銀さん……苦、し……」

妙が銀時の胸を押すと、銀時はそっと放した。
呼吸を整えようとする妙を見て、ニヤリ笑う。

「いちご味、なくなったな」
「……あちこち弄るようなキスしといて、味のなくなったガムみたいな扱いやめてくれません」
「何言ってんだよ。噛めば噛むほど、だろ」
「んっ……!」

いちご味がなくなったのなら今度は。
銀時は唇を重ね合わせながらゆっくりと妙を押し倒した。
驚いて目を見張る妙が抵抗する前に、首筋を指で撫であげ力を奪う。

「やっぱお前が一番甘ェわ」

美味しそうないちごを背に、銀時はいただきますと囁いた。


end


甘いの書きたいなぁ……と思って。
よくある感じの話だから何か既視感あって……(笑)
あれ、前同じようなの書いたっけ?ってなる。……書いたか?
他ジャンル含めて結構たくさん書いてきたから似たり寄ったりが気になるように……。
でも銀→妙の描写は楽しい!お妙さんわかってなくて銀さんが悶々は本当に楽しい!
お粗末さまでした!

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