選択権は君にあり

※R15


酔っ払い、というのは厄介なもので。
介抱する側はほとほと困り果てるものだ。

「……あのさ……」
「……はい?」
「自分で酔ってるって、わかってる?」
「わかってますよ、気分いいもの」

うふふ、と妙は笑った。
緩慢な動きをする彼女はだいぶ酔っているようで。
何でこんな時に限って。
銀時は深いため息を吐いた。
新八も神楽もいないんだぞバカヤロー。
手を出すな、という方が無理がある。
仕事では酔うほど飲まないし、女友達同士なら悪酔いして暴れまくり。そして、一人なら。
銀時は妙を見つめる。
ただちょっと、会いに来ただけだったのに。
顔を見たらすぐ帰るはずだったのに。
その顔が、男の浅ましい欲情を駆り立てるものでなければ、こんな思いはしないで済んだのに。
ぼんやりとした表情、焦点の合っていない潤んだ瞳、上気した頬、赤く濡れた唇。
発せられる言葉からは酒と甘い匂い。
普段は楚々とした娘が色香を纏うという、その差に気がおかしくなりそうだった。
酔った女に、手は出したくないのだが。
面倒な事は御免だ。
しかし、それが想いを寄せる女であるから、今必死に自分と闘っているわけで。
銀さん、と彼女が呼ぶたび理性は崩れかける。
男ってのは、何て単純なのか。

「銀さん、飲まないんですか?」
「うん……飲んだらヤバいからね。俺、必死になって抑えてるもん酒で切れさせたくねーんだわ」
「何のこと?」
「それくらい分かれよ。キャバ嬢なら」

一人で飲んでいたからこその酔い方だろうが、これを店の客に見せてはいないよなと思うと気が気でない。
早く帰って水風呂でも浴びればいいのに。
身体はまったく動かない。
それどころか、ただでさえ色っぽい表情が快感によってどうなるのか、なんて考えてしまう始末。
マズい……これはマズいぞ!
銀時は冷や汗を浮かべた。
大事にしたいから、妙とはきちんと向き合っていきたいのに。
酒に酔って、憶えてませんでは困る。

「……だからさ……お妙さん……」
「んー……?」

首に腕絡めてくるのやめてェェェエエ!!
甘い匂いがふーわふわ。
大好物を我慢する事がどれだけ辛いかわかっているのか。
こっちが必死で堪えているというのに、妙は意識もふーわふわ。

「銀さん……キス……」
「え!?」
「して……ください……」
「え、ちょ、お妙ちゃん!?お前何言ってるかわかってる!?」
「キス……」
「き、奇数?お、お妙は奇数が好きなのかー。ははっ……」

妙はゆっくりと銀時の顔を覗き込む。
この距離は大変危険ですお姉さん。

「き、奇数より偶数かな俺は!だって奇数は割り切れねーよ?中途半端だよね!」
「万事屋は奇数ですよ……」
「おいおい、定春忘れてもらっちゃ困るぜー。万事屋三人と一匹で偶数な!」
「私入れて五人で奇数です……」
「…………」
「奇数……してください……」

奇数してって何よ。
何言ってるのか自分でもわかってないような女に、キスしろと?
頼むから、銀さん、って甘く囁かないでくれ。
理性が、ぐらり。
もう限界、と銀時は妙の揺れる瞳を見つめた。
妙の熱い吐息が銀時の唇を痺れさせる。

「ん……」

妙が悪い。
そういう事にしなければ、欲に負けた自分を保てそうになかった。
いや、俺結構頑張ったよ?
頑張ったけども、誘ったのは妙だから。
もう酔っていようが関係ない。その気があるから誘ったのだ。うん、そうだよ。
今までの葛藤を否定するように、妙の甘い唇を味わい舌を入れた。
呼吸を忘れるくらい、角度を変え、貪って、酔いしれる。
糖分王の銀時ですら、甘過ぎると感じる妙。
けれど、もっともっととこの甘さを求めてしまうのは、決して砂糖では味わえないがゆえ。
どんなに甘くて美味なケーキを出されても、妙の前ではあってないような物。
しかも、いくら食べても減らない最高級の甘味。
……などと言い方したら、彼女は怒るだろうか。笑うだろうか。

「んぅ……ふ……ぁ……」

苦しいのか、妙が銀時の胸板を押し返す。
酸素を求めているとわかっているのに、まるで別のものを求めているように見えて、銀時は心の中で苦笑し、そっと唇を離した。
名残惜しげに二人の間に繋がった糸がプツンと切れる。
妙は恥ずかしそうに手の甲で荒い呼吸をする口元を押さえ、ふいと銀時から顔を逸らす。
今ので少し酔いが醒めたのだろうか。

「気持ちよかった?」
「……苦しかったです」
「お前がしてって言ったんだろ」
「…………」

妙は目を泳がせたあと、遠慮がちに銀時の目を見つめる。
期待の色がちらついていた。

「銀さん……もう、一回……」
「ん」

銀時は口角を上げると、唇ではなく首筋に口づけた。
ひぁ、という短い悲鳴。
妙は何か言おうとするも、それを阻止するように銀時は吸いつき、舌を這わせ、なぞる。
結局甘い声が零れるだけで、何とか紡げたのは、ダメ、という力ない抵抗の言葉のみ。
身を捩ってもがくが、銀時の腕がしっかりと腰を捕らえているため抜け出せない。
身体の向きを変えるくらいしかできず、銀時に背を向けた体勢のまま与えられる刺激に耐えた。
別に乱れてくれて構わねェのに。
銀時はフッと笑う。
項を口に含むようにやんわりと噛みながら、左手は身八口へ、右手は帯に伸ばした。

「や……ぁ……銀さ……んんっ」
「ん?お前、ちょっと大きくなった?」

俺のおかげだな、と耳元で囁けば、妙の白い肌がぼっと赤く色づいた。
シュルシュル、衣ずれの音。
帯を外し放ると、剥き出しになった脚を下から上へとゆっくりなぞった。
びくん、と大きく反応する妙は必死に唇を噛んで声を押し殺している。

「我慢しなくていいんだぜ?」

直に胸を揉みしだき、内腿を舐めるように撫で回しながら、下着に指をかけた。
思わず妙の手がそれを阻止する。

「……嫌ならやめるけど?」
「……っ……」
「どうする?」
「……ぎ、銀さんのバカ……!変態!」
「だってお前酔ってんじゃん。憶えてないーなんて言われたくないんだよね。まあ、忘れられないくらい激しくするつもりだけど」

にやりと笑う銀時を、妙は真っ赤になりながら睨みつけた。
一度ついた火を消す事は困難で、銀時はもとより止めるつもりなどないけれど。
あくまで、決めるのはお前だと言うように。

「どうする?お妙……」
「わ、私は……キスしてって言ったの……!」
「うん」
「……っ、銀さんのバカ……変態……」
「うん」

妙の目に涙が浮かんだ。

「やめないで……」

小さな小さな声で。
呟かれた言葉に満足した銀時は妙を押し倒し下着を脚から引き抜くと、妙の望むキスを愛の言葉と共におくった。


end


何これ恥ずかしい。
えろ書きたいけど直接的な表現は避けたいみたいな(笑)
甘イチャ……少ないよね、と思って書き出したらR15って……。
軽く落ち込むわ!
ちょっとでも気に入ってもらえると嬉しいです……。
お粗末さまでした!!!

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -