遅刻決定!

※学パロ 幼なじみ設定


一面真っ白な世界の中、ざくざくと音を立てながら坂田銀時は走っていた。

「くそ、うまく走れねぇ……!」

降り積もった雪。
何度か足を取られ転びそうになったが、それでも走る。
遅刻しそうだとか、別にそんな理由で走っているわけではない。
そんなことより、もっと大事なこと。
滑るように曲がり角を曲がる。
見えた、と銀時は走るスピードを上げた。
並んで歩くふたつの人影。
そのひとつに向かって、銀時は勢いよく跳び蹴りを食らわした。
ブフォ、と顔面からダイブ。
下がクッションになってしまう雪なのが残念でならない。
アスファルトにめり込めばいいのに。

「高杉君!?大丈夫!?もう、いきなりなんなの坂田君!」
「何なの、じゃねーよ!お前、何で起こしてくれねーんだ!」

銀時はずいともう一方の影の主に詰め寄った。
凛とした風貌で銀時を睨む志村妙。
銀時とは幼なじみでクラスメートだ。

「昨日言ったでしょ。もう起こしてあげないって」
「お前が起こしてくんなきゃ、俺遅刻するだろが!」
「知りません!私が起こしに行っても、グダグダ文句ばかりじゃない!だから嫌になったの!」
「わかった!文句は言わねェ!だから明日からまた起こしに来い!」
「いい加減ひとりで起きられるようになったら?」

妙はムッとして言った。
毎日のように妙が銀時を起こしにやってくる。
それは、小さい頃から。
習慣と言っていいだろう。
だが、それを知ったクラスメートたちが夫婦だ何だとからかうから。
妙はもう起こしに行きたくないと一方的にその習慣を止めてしまった。
それは、朝が苦手な銀時にとっては非常に困ることで。
更に言えば、一日が妙の顔で始まることで、その日を機嫌よく過ごせることにも繋がるのだ。
目を開け最初に見るのが妙。
これほどいい朝はない。

「そんなヤツほっとけ」

パンパンと服についた雪を払うのは高杉晋助。
高杉もまた幼なじみであり、クラスメート。
雪で埋めときゃ良かった、と銀時は舌打ちした。

「高杉君、大丈夫?」
「ああ」

妙と高杉が目を合わせる。
ほんの少しの間でも、妙が男と見つめ合うのは面白くない。
銀時はあからさまに眉根を寄せ、高杉を睨んだ。
高杉の視線が銀時に移る。

「何睨んでやがる」
「うるせぇ。抜け駆けしやがって」
「俺がいつ抜け駆けなんてした。てめーがひとりで起きれねェだけだろ」
「ちょっと、またケンカ?私先に行くからね?」
「え、待て妙!」

妙が先に行ってしまっては、慌てて追いかけた意味がない。
妙と高杉が二人っきりになるのを阻止することと、邪魔者排除して妙と二人で登校すること。
俺と高杉が二人っきりになったってまるで意味がない上に不快極まりねーよ。
銀時は妙の手を掴むと、少しだけ力を入れて引いた。
振り向く妙。
寒さで少し鼻が赤く、マフラーで口元を覆う姿が可愛いな、なんて。
このまま抱きしめてしまいたい。
銀時は衝動に襲われ、ゴクリと喉を鳴らした。

「オイ。そこのモジャモジャの変態」
「誰がモジャモジャの変態だ」
「朝からいかがわしいこと考えてんだ。変態だろ」
「いかがわしいって何だよ。それはテメーの方だろうが」

もう、またケンカする。
妙の呆れた声。
銀時はずいと妙に顔を寄せた。

「とにかく。俺はお前の声で起きるクセがついちまってんの。だから……」
「わかったわ……明日からね。文句言ったらぶっ飛ばすから」
「おう」

ホッと息を吐く。

「妙、お前少し甘すぎんじゃねーのか」
「え?」
「卒業して、大人になってもお前はこいつを起こしに行く気か?」
「そ、それは……」
「オイ高杉。今話まとまったとこだろーが。終わってからグチグチ言うんじゃねーよ」

高杉はフンと鼻で笑った。
いつもいつも、何で邪魔するわけ。
妙と二人っきりになろうとしても、高杉が先に妙と一緒にいることが多い。
つまり、俺と妙の二人っきりの時間より、高杉と妙の二人っきりの時間の方が長いわけだ。
ムカつくったらねーよ。
しかもだ。
小学校からずっと一緒なわけだが、高杉と妙は同じクラスになることが多く、俺一人違うクラスで先生の胸ぐら掴んだ覚えがある。
これは陰謀か?
まあ、今は妙と同じクラスだから良いけど。高杉も一緒だけど!!

「坂田君、何ひとりでブツブツ言ってるの?」
「いや?別に?」
「構うな妙。遅刻するぜ」
「あ、うん。そうね。坂田君も、遅刻しちゃうわよ」

坂田君はやく、と妙は高杉を追う。
腹立つ。
この図が腹立つ!
何で妙はいつも高杉に合わせるのか。
銀時は青筋を浮かべると、雪を丸めて思いっきり高杉に投げつけた。
しかし、高杉はそれをひらりとかわし、雪玉は街路樹の幹に当たった。
まるで予想していたかのように。
フッ、と高杉が笑う。

「こ、この野郎……!」
「こら、坂田君!危ないでしょ!」
「お前には当たんねーようにするよ」
「そういう問題じゃ……」

その時だった。
雪玉が当たった街路樹の枝が震えたのは。
積もっていた雪が塊となって、ドサッと音を立てながら高杉の頭上に落ちる。
雪まみれになる高杉。

「ふ……ブハハハハハハッ!!!高杉!お前!!」
「…………」
「ザマーミロばーか!!」

ゲラゲラと銀時は腹を抱えて笑った。
その横で妙もふるふると肩を震わせて笑っている。
銀時の投げた雪玉をかっこつけて避けたせいか、なおさらカッコ悪い。
何より、妙に笑われたとなれば高杉は相当こたえたはず。

「ふふ、やだもう……」
「妙、もっと笑ってやれ」
「そんなに笑ったら可哀想よ。高杉君、今日は災難ね。二回も雪まみれになって……大丈夫?」

妙は高杉の頭に手を伸ばすと、雪を払った。

「…………」

あれ。
銀時はジトリ、その光景を見つめる。

「……ハッ」
「あ、てめ!今鼻で笑ったな!?調子のってんじゃねーぞコラ!雪くらいテメーで払えや!」

やっぱりムカつくコイツ!
銀時の怒りの声に混じるように、始業を知らせるチャイムが鳴り響いた。


end


なかなか溶けない雪を見て、ハッとなってカッとなった。
ハッとなったのは、高杉の頭上に雪が落ちてくるとこです。その絵がパンと浮かんだんだ。
そして、幼なじみだと美味しいかも!とカッとなった。
勢いで書いたら文章が……まあ、いいか。いつもと大して変わらんね。
銀妙高が好きすぎて、ちょっとした日常までもがこの三人に脳内変換される今日この頃。
お粗末様でした!

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